研究課題
側頭葉てんかんは海馬を起源とするてんかんで発作中夢うつつに行動する自動症が特徴である。この側頭葉てんかんは成人の難治性てんかんで最多の原因であり、また、暴走事故の原因の大部部分を占めるため根治治療には社会的な要請がある。それにもかかわらず側頭葉てんかんの治療法は侵襲の大きい脳外科治療以外に有効性の高い治療法が存在しない。それは疾患成立機序がまだ全く理解されていないからである。申請者は偶然あるノックアウトマウスが1匹の例外もなく1) 海馬硬化(海馬が硬くなる) 2) 海馬のほかに損傷がない 3) 海馬起源といえる自発的なてんかんがある という、従来より求められていた条件をおそらく世界で初めて満たす「側頭葉てんかんモデルマウス」であることを発見した。その後の2年以上の長期間ビデオ観察の結果、このマウスは離乳後2才前後まで普通のマウスと同じように生き、その生涯ほぼ毎日5回から25回の大発作(筋肉の強直とピクピクが順にあらわれる、いわゆるひきつけ)をおこすことが分かった。大発作には常に転倒を伴い、30秒前後続く。ヒトの側頭葉てんかんと同じように睡眠中に発生する大発作がほとんどであった。海馬硬化は海馬全体を覆い尽くし生まれて半年で両側の海馬の構造が全く分からなくなる。このマウス遺伝子に相当するヒト遺伝子に変異が入った患者もイギリスで発見され、やはり生後直後からはげしいてんかんをおこした。この症例の報告の論文には申請者も貢献し、筆頭著者と同等貢献著者となり専門誌BRAINに掲載された。てんかん大発作は薬剤効果を試す対象にもなる。そこで申請者はこのマウスを特許化し国内特許が認められ、国際特許を出願した。現在ヨーロッパの創薬メーカーとライセンス契約の最終段階である。申請者はてんかん大発作の原理について独自の考えを持っており、今後の研究でそれを証明し未来の治療法開発につなげる予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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