研究課題/領域番号 |
25460494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高原 和彦 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (90301233)
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研究分担者 |
稲葉 カヨ 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00115792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レクチン / 糖鎖 / 免疫抑制 |
研究概要 |
C. albicans感染患者の血中には免疫抑制作用を示す成分が存在し、これは菌体表面の糖鎖を含む画分に由来することが示唆されている。そこで、本研究では精製した当該糖鎖をマウスに投与し、その免疫抑制作用を探ることを目的とする。25年度の実験から以下の結果を得た。 C. albicans菌体よりFehling方にて精製したN-glycan(400 μg/マウス)を大腸菌リポ多糖(30 μg/マウス)と共にマウスに投与し、エンドトキシンショックにおけるN-glycanの影響を検討した。その結果、血液中の免疫抑制性のサイトカインIL-10の産生昂進が確認された。この際、他の炎症性サイトカインTNF-α、IFN-γの産生は抑制された。また、C. albicans表面に存在するO-glycan混入の可能性を排除するために、糖鎖の精製過程でβ-elimination処理を行ったが、上記サイトカイン産生誘導には影響しなかった。また、TLR4ノックアウトマウスを用いた場合は、IL-10産生が認められなかった。よって、C. albicans表面N-glycanがLPS刺激下でのIL-10産生昂進に働く事が明らかになった。 次に、リポ多糖の投与量を上げ(200 μg/マウス)致死性のエンドトキシンショックにおけるN-glycanの影響を検討したところ、前述と同様にIL-10の産生昂進と死亡率の改善が認められた(p < 0.01、Wilcoxon test)。 また、マウスをClodronate/liposomeで処理しマクロファージを欠失すると、IL-10産生が大きく減少した。 以上の結果より、C. albicans表面N-glycanがマクロファージのIL-10産生を昂進し、免疫抑制効果を発揮することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の様に、C. albicans糖鎖に免疫抑制作用の強いIL-10産生誘導がある事、および実験モデルにて生体における意義を明らかにした。 一方で、マウスにおける上記IL-10産生細胞の同定を細胞内サイトカイン染色にて検討したが、明確な結果は得られなかった。他法として、IL-10遺伝子の3’-非翻訳領域に蛍光蛋白質VENUS遺伝子をノックインしたマウスの利用も試みたが、現在まで明確な結果は得ていない。ここで用いたマウスはB57BL/6系であるが、N-glycanによるIL-10産生はBALB/c系マウスで高いことから、現在、マウスのbackcrossを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上記IL-10産生細胞の同定は、マウスのbackcross完了後に再度行う。これに加えて、マウス腹腔マクロファージ等を精製し、これをin vitroでN-glycanで刺激しIL-10産生を検討する。 エンドトキシンショック改善におけるIL-10の役割を、マウスに抗IL-10抗体を投与し前記同様に生存率を検討する。 マウスマクロファージおよび樹状細胞の一部に発現する糖鎖レセプターSIGNR1の関与を検討する。この為に抗SIGNR1抗体およびSIGNR1KOマウスを用いる。現在、SIGNR1KOマウスのBALB/cへのbackcrossを進めている。 N-glycanによるIL-10産生昂進が抗原特異的免疫応答に与える影響を検討するために、リポ多糖、N-glycanおよび卵白アルブミン(OVA)を同時に投与し一定期間後の抗原特異的免疫応答を、脾細胞をOVAで刺激しその後のIFN-γ等の産生を指標として検討する。この際、IFN-γ産生細胞を確認するためにDO11.10マウスより調製したT細胞を野生型マウスに導入し、同様に免疫した後に当該T細胞のIFN-γ産生などを検討する。 以上の実験より、C. albicans N-glycanのエンドトキシンショック抑制機構を明らかにすると共に、その後の抗原特異的免疫応答に与える影響を検討する。
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