研究課題
25年度の研究より、C. albicans N-glycan糖鎖がリポ多糖を用いたマウス敗血症モデルにおいて、免疫抑制性のIL-10の産生を誘導しマウスの生存率を改善することを明らかとした。また、clodronate/liposome用いてマウスマクロファージ(Mφ)を除くとIL-10の産生が低下することも示した。これらに続き、26年度は以下の結果を得た。clodronate/liposomeを用いた実験結果を確認するために、マウス腹腔より常在性Mφを精製し、in vitroにてLPSにて刺激したところ、N-glycan存在下でIL-10の産生が3倍以上昂進した。この際に、Mφを抗SIGNR1抗体及び抗マクロファージマンノースレセプター抗体で処理した結果、前者によってIL-10の産生が低下した。次に、in vivoにおいてN-glycanに誘導されるIL-10の意義を推察する為に、マウス敗血症誘導時にIL-10に対する中和抗体を投与したところ、当該N-glycan存在下のマウス生存率が低下した。敗血症は急性期(3~5日)に過剰な免疫応答を引き起こすだけでなく、後期(1~3週間)においては逆に危険な免疫抑制状態を惹起する。そこで、敗血症誘導時にオボアルブミン(OVA)を投与し、2週間後の抗原特異的IL-10産生を脾臓細胞を用いて検討した。その結果、N-glycanによるIL-10産生への影響は認められなかった。よって、C. albicans N-glycanは敗血症急性期における免疫抑制に働くものの、後期におけるIL-10産生には影響しない事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
C. albicans N-glycan糖鎖によって誘導されるIL-10がマウス敗血症における生存率の改善に働く事、および糖鎖の宿主側の認識細胞並びにそれに発現するレセプターの一つとしてレクチンSIGNR1の関与を明らかにした。これらの結果は、本機構解明の基礎的部分を成すものである。また、当該糖鎖が敗血症後期において、抗原特異的IFN-g産生を昂進するとの新規な発見があり、敗血症治療の新たな可能性が示された。
IL-10産生細胞の生体内局在等を明らかにする為に、IL-10-VENUSノックインマウスのBalb/c系統へのbackcrossが完了したのでこれを用いる。また、SIGNR1ノックアウトマウスについてもBalb/c系統へのbackcrossが完了したので、当該機構へのSIGNR1の関与を個体レベルで確認する。また、敗血症後期におけるIFN-g産生昂進の機構を明らかにする為に、OVA特異的TCRトランスジェニックDO11.10マウスのT細胞を、Balb/cマウスに移植し敗血症を惹起し、その挙動を解析する。可能であれば、日和見感染菌の感染実験により、当該IFN-g産生昂進の意義を確認する。
その他の経費の中で、論文投稿料が予定より少額の収まったために差額か生じた。
次年度使用額は、試薬および消耗品のために使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
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