研究課題
先の研究で、精製C. albicans N-glycanがIL-10の産生昂進を介してマウス敗血症モデルにおける生存率を改善すること、当該IL-10産生がclodoronate/liposomeに感受性であること、および精製した常在性腹腔マクロファージに於いても当該糖鎖によるIL-10産生昂進が確認された。一方で、実際の臨床における敗血症では数週間後に起きる免疫抑制状態も問題とされている。26年度の結果では、少なくとも当該N-glycanによって誘導されるIL-10は、敗血症後期における抗原特異的IL-10の産生誘導には働かないことを確認した。続いて本年度は以下の実験結果を得た。始めに、ヒツジ赤血球を用いた遅延型過敏反応(DTH)におけるリポ多糖および当該N-glycanの影響を検討した。マウスの一方の足蹄にヒツジ赤血球を投与し同時に当該N-glycanおよびリポ多糖を静脈投与した。1週間後に別の足蹄に赤血球を投与し、1日後に腫れを測定した。その結果、リポ多糖を投与すると足蹄の腫れが減少することから、敗血症による後期免疫抑制が生じていることが示された。一方で、当該N-glycanを投与すると足蹄の腫れはほぼ正常レベルまで回復した。よって、当該N-glycanは敗血症初期には過剰な免疫応答を抑制し、後期には免疫抑制を解除することが示唆された。予備的な実験で、敗血症誘導時にOVAを投与し、2週間後のin vitroにおける抗原特異的サイトカイン産生を検討したところ、前述の様にIL-10産生には変化が認められなかったが、IFN-g産生の顕著な昂進が見られ、この結果は当該N-glycanが敗血症後期における免疫抑制の解除を超えて免疫応答の促進に働く事を示唆している。以上の結果から、C. albicans N-glycanが敗血症の初期における過剰な免疫応答、および後期における抑制的な免疫応答の双方を改善できる可能性が示唆された。
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