研究課題/領域番号 |
25460495
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
緒方 篤 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90309451)
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研究分担者 |
田中 敏郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40273651)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セマフォリン4D / 関節リウマチ |
研究概要 |
まず、関節リウマチ、変形性関節症の血清、関節液における可溶性セマフォリン4Dの測定を行なった。健康人の血清可溶性セマフォリン4Dに比べて関節リウマチ患者の血清可溶性セマフォリン4Dの濃度は有意に高値であった。変形性関節症、骨粗鬆症などの骨関節疾患、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおいては、可溶性セマフォリン4Dの有意な増加は認められなかった。関節液中においては変形性関節症においては可溶性セマフォリン4D濃度は感度以下であったのに対して関節リウマチにおいては有意に高値であった。 関節リウマチにおいて、疾患活動性指標であるDAS28、CRP、リウマチ因子、尿中デオキシピリジノリンは血清可溶性セマフォリン4Dと相関を認めた。一方、性別、年齢、罹病期間や投薬されている薬剤の有無などの影響は認められなかった。 次に関節滑膜組織におけるセマフォリン4Dの発現を免疫組織染色において検討した。関節リウマチの滑膜では滑膜表層だけでなく、深層にあるリンパ濾胞様の細胞浸潤部分に強く発現していた。一方で変形性関節症の滑膜では表層にやや染色が認められるが、滑膜深層には染色は認められなかった。 FACS解析による細胞表面のセマフォリン4Dの発現を解析した。末梢血液中のリンパ球、単球において細胞表面にセマフォリン4Dの発現が見られるが、健康人に比べて、関節リウマチではセマフォリン4Dの発現がやや低下していた。関節液中の細胞でも同様な傾向が見られた。 一方、血清可溶性セマフォリン3Aは関節リウマチにおいて有意な変動を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清や関節液中の可溶性セマフォリン4D濃度の測定および、関節滑膜や末梢や関節液中の細胞におけるセマフォリン4Dの発現の検討は予定通り遂行された。予想通り関節リウマチにおけるセマフォリン4Dの増加が証明されたが、予想に反し細胞表面におけるセマフォリン4Dの増加が確認できなかった。むしろ細胞表面のセマフォリン4D発現は低下しており、産生増加ではなく、shedding outの増加である可能性が示唆された。そこで予定外の産生機序の解析の実験を追加することとした。 一方で血清可溶性セマフォリン3Aは関節リウマチで有意な変動を認めなかったため、その後の詳細解析を中止し、セマフォリン4Dに研究をしぼることとした。 次年度はセマフォリン4Dの関節リウマチでの役割である機能解析は予定通り開始できる体制が整った。また予定がではあるが可溶性セマフォリンの産生メカニズムの詳細解析を行なうこととした。以上より研究計画はおおむね順調に伸展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
関節リウマチにおける可溶性セマフォリン4Dの産生増加が確認されたが、細胞表面のセマフォリン4Dの発現は増加しておらずむしろ減少していた。そのため、可溶性セマフォリン4Dは、セマフォリン4D発現細胞数の増加や細胞におけるセマフォリン4D過剰産生というよりは細胞表面からのセマフォリン4Dのsheding outの増加による可能性が示唆された。そのため当初予定していなかった可溶性セマフォリン4Dの産生機序の解明を行なうこととした。 一方で血清可溶性セマフォリン3Aは関節リウマチで有意な変動を認めなかったため、その後の詳細解析を中止し、セマフォリン4Dに今後の研究をしぼることとした。 さらに、可溶性セマフォリン4Dの機能解析(免疫や破骨細胞や骨芽細胞への影響の有無の検討)を行なう。さらに、抗セマフォリン4D抗体によるマウス関節炎への影響を検討するために、抗セマフォリン4D抗体の精製を行なう。充分量の抗体が得られれば動物実験を開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本来セマフォリンの解析はセマフォリン4Dとともにセマフォリン3Aも行なう予定であったがセマフォリン3Aに関しては関節リウマチでの有意な変動が認められなかったため詳細な解析を中止した。そのためセマフォリン3A解析のための資金を繰り越すことになった。一方で、セマフォリン4Dの産生メカニズムに関して当初は想定していなかった興味深い知見が得られたため繰り越し資金を充当して新たな検討を加えることにした。 本来セマフォリン3Aの解析に使用する予定であった資金は次年度に繰り越し、セマフォリン4Dの産生メカニズムの解析に充当し、次年度に細胞表面のセマフォリン4Dがsheding outによると想定される可溶性セマフォリン4Dの産生メカニズムの解析を次年度に計画したい。具体的にはsheding outさせる刺激(炎症性サイトカインや蛋白分解酵素など)の同定を探索的に検討することとした。
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