研究課題
基盤研究(C)
I. C5aのヒト癌細胞に対する増殖促進作用の解明ヒト胆管癌細胞株HuCCT1にヒトC5a受容体(C5aR)を発現させたHuCCT1/C5aR細胞は、C5a 100nM添加RPMI1640培養液で24時間培養すると、増殖が約2倍になり、この効果はC5aR拮抗剤で濃度依存性に抑制された。シグナル伝達経路を種々の伝達分子阻害剤による増殖抑制で検討したが、明らかな経路の同定には至らなかった。細胞周期へのC5a効果をPIで核染色してフローサイトメトリーで調べたが、有意な差はみられず、むしろアポトーシス抑制への効果が示唆された。II. C5aのヒト癌細胞の転移促進作用の解明ヌードマウスに尾静脈から癌細胞を注入し6週間後に肺転移巣を調べた。C5a 100nMで1時間刺激したHuCCT1/C5aRはHuCCT1/mockより5倍、C5a無刺激HuCCT1/C5aRより3倍、肺転移巣が増加した。III. C5a受容体発現マウス癌細胞の作製マウス腎癌細胞株RenCaにマウスC5aR遺伝子発現プラスミドをリン酸カルシウム法で導入し、ネオマイシン添加培地で選別してRenCa/C5aR細胞をクローニングした。さらに、腎臓への注射による発癌部からの遠隔転移をみる実験を行ったが手技の困難さから受容体発現と転移能を示す結果は得られなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
C5aによるヒト癌細胞への作用を当初の計画どおり増殖と転移から調べ、共にC5aRに依存して促進作用があることを解明した。シグナル伝達経路を種々の伝達分子阻害剤による増殖抑制で検討をも行ったが経路の同定はできなかった。しかし、C5aの癌細胞でのシグナル系同定に関する手技や試薬に対する知識を蓄積できた。また、C5aRを発現するマウス腎癌細胞RenCa/C5aRの作製後、さらにこの細胞をマウス腎臓に注射して発癌部からの転移におけるC5aR発現の影響検討も行った。有意な結果は得られなかったが、RenCa/C5aR細胞の増殖性や転移能などの次年度のマウス実験設定への手がかりとなるデータを得ることができた。
アレルギー反応によるC5a産生の癌増殖促進効果の解析1.RenCa細胞と同じ系統のBalb/cマウスを20 mg/kgの牛血清アルブミン(BSA)/完全フロイントアジュバントのfootpad注射で感作し、2週間後同様の注射でboosterをかける 2.さらに2週間後、尾静脈から100 µl採血して血清を分離し、Ouchterlony法でBSAに対する抗体価を確認する。 3.充分な抗体価のマウスの皮下にBSA 1mg/mlを添加した2x106 RenCa/C5aR cells/50 µlを注射し、アルザス反応で移植癌細胞微小環境にC5aを誘導する。数週間後に腫瘤を採取する。非感作マウスあるいはRenCa/mockで1週間後の腫瘤の大きさ、重さを比較する。 4.各々の腫瘤からパラフィン切片を作製する。 5.TAMをCD68とCD163/204で、MDSCをCD11bとGr1、血管内皮細胞をCD31に対する抗体で各々免疫染色し、浸潤細胞や血管増生を比較する。以上より、アレルギー反応による癌細胞の増殖・浸潤促進効果が明らかになる。
正立顕微鏡デジタルカメラシステムを購入予定であったが、本学部総合研究施設に設置されたため購入の必要がなくなった。さらに、本年度に計画していた動物実験が優先すべき他の実験のため、次年度に持ち越しとなった。しかし、当初、製薬会社から供与予定のC5a受容体の拮抗剤が計画立案準備などの遅れのため供与に至らず、動物実験に必要な大量の拮抗剤を購入せざるをえなくなった。これらの事情により、繰り越し金額を次年度施行予定の動物実験と試薬購入に必要な金額の増額に充てる。動物実験のためのマウス購入、飼育費、およびC5a受容体拮抗剤などの実験試薬の購入に、繰り越し金額の研究費を充てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)
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