研究課題
I. アレルギー反応による癌微小環境C5a産生の癌増殖促進効果の解析マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入してC5a受容体を発現させたRenCa/C5aRとコントロールRenCa/mockを異なる近赤外線probeで標識し、両者を混合して抗卵白アルブミンIgGと共に同系のBalb/cマウス皮膚内に注射し、直後に尾静脈から卵白アルブミンを投与する。マウス皮膚内で浸潤する癌細胞の近赤外線を経時的に測定し、両癌細胞の広がる面積を比較する計画である。II. 移行上皮癌C5a受容体発現の意義解明浸潤性尿上皮癌は根治手術後も50%近くが再発・転移を起こすため、補助療法が必要であるが、その必要性を提示する有力な予後因子は未だない。52名の根治手術を受けた浸潤性尿上皮癌患者中38名(73%)で癌細胞がC5a受容体陽性であった。C5a受容体は癌細胞膜に認められ、浸潤先端部の癌細胞で特に強く発現していた。非癌上皮細胞に発現はみられなかった。癌細胞C5a受容体発現は癌初期(T1-2)の患者では79%がC5a受容体陽性であった。生存率はC5a受容体陽性癌患者で有意に低かった。C5a受容体発現は予後不良を予見するマーカーとして、補助療法選択の必要性を提示しており、癌初期でも陽性率が高いことはC5a受容体発現検出によって癌初期から補助療法を開始できる可能性を示唆している。III. 胃癌におけるC5a-C5a受容体系の作用解明C5a受容体発現胃癌細胞(MKN1, MKN7)はC5a刺激によって浸潤が亢進した。C5a受容体の過剰発現によって、C5a刺激によるRho-GDPからRho-GTPへの移行が亢進し、ストレスファイバーやフィロポディアなどの形態変化がみられた。胃癌細胞のC5a-C5受容体系はRhoA活性化を介して、浸潤亢進を促進していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入してC5a受容体を発現させたRenCa/C5aR細胞が数回の継代後液体窒素中にストックしていたが、融解して実験用に再度培養したところC5a受容体を発現する細胞の割合が数パーセントに減少していた。それで、抗C5a受容体抗体ビーズを使ってC5a受容体発現細胞を分離し、培養して増やす必要が生じたため、期間内の実験遂行ができなかった。
アレルギー反応による癌微小環境C5a産生の癌増殖促進効果の解析の実行マウス腎癌細胞RenCaにマウスC5a受容体遺伝子を挿入してC5a受容体を発現させたRenCa/C5aRとコントロールRenCa/mockを異なる近赤外線probeで標識し、両者を混合して抗卵白アルブミンIgGと共に同系のBalb/cマウス皮膚内に注射し、直後に尾静脈から卵白アルブミンを投与する。さらに、癌細胞注射部の組織を採取しパラフィン切片を作製する。TAMをCD68とCD163/204で、MDSCをCD11bとGr1、血管内皮細胞をCD31に対する抗体で各々免疫染色し、浸潤細胞や血管増生を比較する。以上より、アレルギー反応による癌細胞の増殖・浸潤促進効果が明らかになる。
本年度に計画していた動物実験が癌細胞の状態不良のため、次年度に持ち越しとなった。当初製薬会社から供与を予定していたC5a受容体拮抗剤が供与拒否のため、動物実験に必要な大量の拮抗剤を購入せざるをえなくなった。これらの事情により、繰り越し金額を次年度施行予定の動物実験と試薬購入に必要な金額の増額に充てる。
動物実験のためのマウス購入、飼育費、およびC5a受容体拮抗剤などの実験試薬や消耗品、などの購入に、繰り越し金額の研究費を充てる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (6件)
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