研究課題/領域番号 |
25460499
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡田 誠治 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (50282455)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高度免疫不全マウス / 抗体療法 / マウスモデル / 生体イメージング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、悪性腫瘍抗体療法のマウスモデルを樹立することである。特に悪性リンパ腫と胆管細胞癌のマウスモデルを用いて、これらの腫瘍に対する抗体とヒトNK細胞を介したAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)の有効性を確認する評価系を構築する。抗体は、抗CD47抗体と抗CD147抗体を用いて、これらの抗体の臨床応用の可能性を探る。 平成26年度は、以下の2つの研究を遂行した。 1.原発性滲出性悪性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL) マウスモデルを用いた抗ヒトVEGF抗体療法の有用性の検討: PEL細胞ではVEGFを分泌していることを確認した。PELマウスモデルに抗VEGF7抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍性腹水の大幅な減少が認められた。これらの結果から、PELに対する抗VEGF抗体の有効性が期待できる。 2.胆管細胞癌同所移植モデルによる抗ヒトVEGF抗体療法の有用性の検討:ELISA法により胆管細胞癌は、VEGFを大量に産生していることが判明した。そのため、Balb/c Nude Rag-2/Jak3二重欠損マウス(Nude R/Jマウス)皮下にヒト胆管細胞癌細胞株(M213)を移植し抗VEGF抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍の縮小が認められた。これらのマウスでは、血管新生が阻害されていた。また、Acetazolamideを併用したところ、腫瘍抑制の相乗効果が認められた。 これらの結果から、VEGFを分泌する腫瘍に対する抗ヒトVEGF抗体療法の有用性が示唆された。また、高度免疫不全マウスへのヒト腫瘍細胞移植系は、抗体療法の評価に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胆管細胞癌の同所移植モデルを樹立した。抗CD47抗体と抗VEGF抗体の有用性をヒト胆管細胞癌と悪性リンパ腫のマウスモデルを用いて証明した。また、培養系における抗CD47抗体活性評価系の確立し、研究成果の一部は既に英文論文として受理されていることなど、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト胆管細胞癌の同所移植モデルと原発性滲出性悪性リンパ腫マウスモデルを用いて、ヒト抗CD147抗体等の有効性を検証する。また、ヒトの造血・免疫系を構築したマウスとヒトNK細胞を増殖させたマウスを用いて、NK細胞によるAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)活性を評価する系を樹立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、マウスを用いた実験を行うにあたり、主にin vitroにおける条件検討を行っていた。培養系の実験ではそれほど費用がかからないこと、高度免疫不全マウスを用いた実験では比較的高額の費用がかかること、マウス実験は同時期に行った方が効率よく行えることから、研究費を平成27年度に繰り越した。平成27年度は最終年度であり、複数のマウスを用いた実験を計画している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、様々な抗体を用いたマウス実験を計画している。マウス実験は同時期に行った方が効率よく少ない費用で行うことができることから、マウス実験の多くを平成27年度に行うように計画した。マウス投与に必要な量の抗体作成、必要数のマウスの繁殖や解析にかかる費用等を考慮して、平成26年度からの繰越額を用いると十分なマウス実験を行うことができる。
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