研究課題
α-シヌクレイン(ASyn)の凝集、及び蓄積は細胞内のオートファジーシステムを阻害することにより神経変性疾患の病態進行原因の一つと考えられている。近年、ライソゾーム蓄積病の中枢神経系では、オートファジーシステムの異常が報告されているが、その原因などの詳細は解明されていない。一方、我々はこれまで複数のライソゾーム蓄積病の中枢神経系において、ASynが蓄積していることを見出したが、病態への関与は解明されていない。本研究で、我々はライソゾーム蓄積病の一つであるサンドホフ病モデルマウス(SDマウス)のASyn遺伝子を欠損させたマウス(DKOマウス)を用いて、ASynが蓄積することによるオートファジー分子メカニズムへの影響と病態への関与を解明した。ASynが蓄積が認められないDKOマウスでは、SDマウスと比較して僅かに運動能と寿命の改善が確認された。SDマウスの中枢神経系では、ASynが蓄積することにより、オートファジー/プロテアソームシステムが異常を起こし、結果としてミトコンドリアの機能低下などが引き起こし、病態の進行に影響を与えていると推測した。そこで、SDマウスのオートファジーシステムの状況を確認したところ、中枢神経系においてLC3-II、ユビキチン化タンパクの蓄積が確認され、DKOマウスではこれらのタンパク質の蓄積は改善されていた。オートファジーシステムの異常は、ミトコンドリアの機能低下などが引き起ことが知られており、実際SDマウスでは抗酸化タンパク質SOD2の発現の低下が確認され、その結果、ミトコンドリアの形態異常と活性酸素による脂質の酸化が確認された。以上のことから、サンドホフ病ではASynが中神経系に蓄積することのより、オートファジー/プロテアソームシステムが異常を起こし、病態に影響を与えていることを解明した。
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Experimental Neurology
巻: 284(Part A) ページ: 38-49
10.1016/j.expneurol.2016.07.011.