研究課題/領域番号 |
25460501
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小黒 恵司 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90231232)
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研究分担者 |
島崎 久仁子 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40142153)
横田 英典 自治医科大学, 医学部, 講師 (90254929)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | てんかん / 遺伝子治療 / ELマウス / ミニブタ / AAVベクター |
研究概要 |
・遺伝子治療をより効率的に行うに当たっては、治療遺伝子をてんかん焦点(原性)により近い部位に発現させる必要があり、発作焦点の同定が重要となる。てんかん自然発生ELマウス(以下EL)の発作焦点はこれまでに明確になっていないため、脳血流測定から同マウスの発作焦点の同定を試みた。Tc-99mHMPAO SPECT&RIAにより安静時脳血流を計測したところ、母系コントロールDDYに比し、ELでは皮質、海馬共に脳血液量が低かった。発作時脳血流はEL両側海馬と一部の皮質において増加していた。一般的に発作焦点は安静時血流が低く、発作時血流が増加するとされる。このことより、ELの発作焦点は、海馬あるいは皮質(海馬前額断同平面)に推定された。さらに細かい焦点部位の同定を今後行う予定である。 ・同様に、てんかん原性を持つ部位を検索する事を目的に、興奮抑制系である中間神経の海馬における発現をparvalbumin染色により比較した。DG,CA1,CA3いずれの領域においてもELにおける発現がDDYに比し、有意に少なく、ELにおける抑制系の脆弱性が示唆された。さらに、神経活動の指標の1つと言われるc-fosの発現を免疫組織的に比較したところ、EL海馬全般においてDDYに比し、発現が亢進していた。これらは、いずれも海馬のてんかん原性を示唆する所見である。前年度までの結果と合わせ、ELでは、過剰興奮性と興奮抑制系の脆弱性が併せて存在し、てんかん原性をもたらしていると考えられた。 ・これまで、血管内投与型AAVベクターの発現はC57BL6の中枢神経組織において発現が確認されていたが、今回新たに、ELにおいてEGFPを搭載したAAVベクターを静注し、海馬、皮質における発現を確認した。 ・ミニブタへの投与を1年前倒しに行い、同様にEGFPを搭載したAAVベクターを静注し、海馬、皮質における発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療遺伝子を効率的に供給するための、EL発作焦点の同定実験と遺伝子投与前の予備実験としてのにEGFP搭載AAV投与実験を平行して行った。前者においては海馬と皮質の一部の焦点である可能性が高まり、後者においてはELにおいてAAVベクター投与による搭載蛋白の脳皮質や海馬における発現を確認した。今後、実際にてんかん抑制系蛋白の投与を行う予定であるが、投与後の治療効果の定量的判定法を確立しているところである。 また、1年前倒しで大型動物であるミニブタへの投与実験を開始しており、同様に神経細胞への発現を確認している。 全体としては概ね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ELてんかん発作焦点(原性)部位の同定については海馬と皮質の一部に強く疑われるが、更に細かい部位での発作焦点の同定が必要である。脳血流解析においてはSPECTとMRIのfusionやcomputerによる software的解析により、発作焦点を絞り込む予定である。 既に血管内投与型AAVによるEGFPの神経細胞への発現は確認されたので、今後は実際の治療遺伝子を投与予定である。また、それに先立ち、発作抑制効果の定量的評価法を決める必要がある。現在、対外的に定量的に電気刺激を与えて発作を誘発し、刺激の発作誘発閾値により評価する方法を開発中である。 大型動物のブタモデルにおいては、投与蛋白の発現は確認された。今後は、薬物あるいは電気刺激によるてんかんモデルを作成予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は実際の血管内意投与型AAVによるてんかん治療遺伝子の投与を行っておらず、主にその作成費分の予算が未使用となったため。 てんかん治療遺伝子の投与準備が整い次第、作成、使用予定である。
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