研究課題
基盤研究(C)
MAIT細胞の動脈硬化症の病巣進展に対する役割を明らかにする目的で実験を行い、以下の成績を得た。①CD1d/ApoE-double knockout (CD1d-DKO), MR1/ApoE -DKO (MR1-DKO)を交配し、apoe, cd1d, mr1ゲノムの遺伝子破壊を各primer pairを用いてスクリーニングすることでCD1d/MR1/ApoE-triple knockout(TKO)マウスを樹立した。②TKOマウスから調整した脾細胞、肝単核球、胸腺細胞分画についてFACS解析を行った結果、同マウスではα-galactosylceramide (GC)-CD1d tetramer+/TCRβ+のiNKT細胞画分はほとんど存在しなかったが、NK1.1+/TCRβ+細胞画分は残存していた。③TKOマウスを普通食給餌下に13週飼育し、大動脈弁輪部の凍結切片を作製、oil red O染色後脂質コア(赤色)を測定し、平均病巣面積を算出した。MR1-DKOで認められたApoE single KO (SKO)より増大した病巣面積は、MR1-DKOにCD1dの遺伝子破壊を追加することによって得たTKOにおいて減少しなかった。④MR1-DKOにおいてMAIT細胞欠損下におけるNKT細胞の自発活性化への MAIT細胞の関与を調べる目的で、WT(C57BL/6;NKT細胞ソース)およびB6.CD1d KO(NKT -/MAIT +;MAIT細胞ソース)マウスからT細胞画分をenrichし、脾樹状細胞画分とNKT細胞リガンドであるα-GC存在下に96-well plateで3日間培養した。その結果、MAIT細胞の添加はNKT細胞活性化を直接には抑制しなかった。③④より、MAIT細胞がNKT細胞の活性化とは独立に、抗動脈硬化性を有していることが強く示唆された。
3: やや遅れている
達成分: ①TKOが樹立出来た。②NKT細胞の活性化ではなく、MAIT細胞の欠損自体が動脈硬化促進性に強く作用していることを示すことが出来た。③NKT細胞との混合培養でMAIT細胞がNKT細胞の活性化を直接抑制している実験結果は得られなかった。未達成分:①TKOにMAIT細胞を移入することでMAIT細胞の抗動脈硬化性を示す。②MR1-DKOで見出されたNKT細胞の自発的活性化の原因を突き止める。初年度で未達成分①までは明らかにし、次年度は抗動脈硬化性メカニズムに集中する予定であったため「やや遅れている」と考えている。しかし次年度の研究に向けて十分な匹数のTKOマウスを作製出来たことはプラスである。
今後の計画① TKOにMAIT細胞を移入することでMAIT細胞の抗動脈硬化性を示す、とともにMAIT細胞が担っている抗動脈硬化性のメカニズムを明らかにする。前者ではCD1d-DKOからMAIT細胞をソート、TKOマウスへの移入後、病巣面積測定を行う。後者では、レーザーマイクロダイセクション法とマイクロアレイなどを用いて病巣における遺伝子発現プロフィールを解析し、MAIT細胞の機能・病巣減少の標的を明らかにする。② MAIT細胞欠損がNKT細胞機能調節にどのように影響しているか、直接機能抑制をしていない場合、何がその標的となっているかを明らかにする。このためにTKOマウスなどへのNKT細胞細胞移入実験を行い、増殖・活性化を経時的に解析する。③ CD1d/MR1二重欠損状態でもNK1.1+TCRβ+細胞はごく少ないものの残存していた。この残存NKT細胞亜群の性質を明らかにし、この細胞の病巣進展に対する役割を調べる。TCR Vβ鎖の偏倚使用、インバリアントTCR Vα鎖の使用、特有な細胞表面抗原の発現があるか否か、さらには分化関連class Ib分子の解析などを行う。
当初見込んでいた動物飼育・管理費が少なく(頭数及び飼育日数により)支出されたため。次年度動物飼育・管理費に支出する。
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