研究課題/領域番号 |
25460506
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岩本 隆司 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60223426)
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研究分担者 |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
野田 明子 中部大学, 臨床検査技術教育・実習センター, 教授 (80252287)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 拡張型心筋症 / トランスジェニックマウス / アンジオテンシン変換酵素 |
研究実績の概要 |
我々が樹立したマイクロRNA(miRNA)miR-143とmiR-145を心筋特異的に発現したトランスジェニックマウス(TG)αミオシン重鎖(MHC)miR-143/145は加齢と共にヒト拡張型心筋症様症状を発症する。このTGはmiR-143の発現が優位であるため、miR-143による影響が大きいと考えられるが、miR-145の機能を検討するために、αMHCmiR-145TGを作成し、心筋におけるmiR-145の強発現の影響を検討した。少なくとも4か月齢までの観察でαMHCmiR-145TGには拡張型心筋症等の症状は認められないため、miR-143が本病態には重要な働きをしている事が明らかになった。一方、現在までの解析でmiR-143の強発現が直接アンジオテンシン変換酵素の発現亢進を誘導するデータが得られていない。そこで、我々はmiR-143が間接的に何か他の分子を介して、アンジオテンシン変換酵素の発現を下げている可能性を考えて、再度マイクロアレイによる発現プロファイルの結果を再解析した。それらの中で解糖系の律速段階で働く分子であるヘキソキナーゼ2(HK2)に着目した。HK2は最近miR-143の標的として注目されてきているがαMHCmiR-143/145TGの心筋においても発現が有意に低下していた。そこでHK2を心筋細胞において補填することにより、本TGの病態が改善されるかどうかを検討するために、αMHCプロモーターにHK2cDNAを連結してTGの作成を試みた所、4匹のfounder mouseを得る事が出来た。現在それらのマウスの系統化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今まで得られなかった心筋細胞でのmiR-145の単独強発現TGの樹立に成功し、心筋細胞におけるmiR-143とmiR-145の機能の違いを明らかにする事ができた。しかし、miR-143がアンジオテンシン変換酵素の発現を下げる分子メカニズムは依然として明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
我々は本病態の原因の一つとして、HK2の発現低下の可能性を疑い、4匹のTGの作成に成功している。この中から高発現マウス系統を樹立し、αMHC-miRT-143/145と交配させ、27年度の夏までにmiR-143/145とHK2のダブルTGを得て、心機能やアンジオテンシン変換酵素への影響を検討しする。また、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の経路の活性化により本病態が改善できるかを新たにTGを作成して検討すると共に、miR-143の発現が低く心機能に異常のない系統のTGに心負荷をかけて、miR-143の中等度発現の生体への影響の検討を試みる。更に他の心不全モデルマウスやヒト不全心でのこれらmiRNAの発現を検討する。これらの解析により心機能不全におけるmiR-143/145の発現異常の関与の全体像を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた標的遺伝子の絞りこみが本年度に達成できなかったため、その解析費用が予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に予定していた標的遺伝子の絞り込みのために、新たに樹立したトランスジェニックマウスの解析費用として使用する計画である。
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