研究課題
マイクロRNA-143と145は、ヒトの不全心で発現が上昇するという報告があるが、心臓での機能は不明である。我々はこれらのマイクロRNAの高発現が心機能に与える影響を調べるためにαミオシン重鎖のプロモーターでドライブするトランスジェニックマウス(αMHC/miR-143/145TG)を作成した。3系統のうち、miR-143の発現が高い2系統は拡張型心筋症様の症状を呈して、多くが生後半年以内に死亡した。一方、miR-145の発現は症状の重い系統においても野生型と比べて殆ど差が無かったため、この病態には主にmiR-143が関与していると考えられた。実際miR-145の単独高発現TGを作成したが、心機能には特に異常が認められなかった。αMHC/miR-143/145TGの心臓ではアンジオテンシン変換酵素(ACE)が上昇しており、ACE阻害剤カプトプリルの飲用投与で有意に生存率が向上した為、本病態にACEが関与していると思われた。一方、アンジオテンシンの受容体の発現を調べた所、MAS1の発現が有意に低下していた。これらの結果から本TGではアンジオテンシンの受容体の発現の乱れが病態に関与している可能性が示唆された。また最近解糖系の律速酵素ヘキソキナーゼ2 (HK2)がmiR-143の標的であるという報告がなされ、本TG心において解析した結果、HK2の発現が有意に低下しており、症状の程度と相関していた。更に2014年にHK2が心筋細胞の飢餓条件下におけるオートファジーに必須であるとの報告があり、本TG心においてもオートファゴゾームのマーカーであるLC3IIと選択的分解基質のp62の増加が認められた。以上より本TGにHK2の低下によるオートファジー不全の関与が示唆された。現在我々は心筋特異的にHK2を発現するTGを作成し、αMHC/miR-143/145TGと交配してダブルTGを作成し、HK2の補填が如何なる効果をもつか観察中である。同様に、心筋特異的にMAS1を発現するTGも作成して、現在解析を始めている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
中部大学生命健康科学研究所紀要
巻: 12 ページ: 92-95
Mol Cell Biochem.
巻: 403 ページ: 231-241
10.1007/s11010-015-2353-y.
http://www3.chubu.ac.jp/celar/