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2013 年度 実施状況報告書

レトロウイルスのToll様受容体を利用した免疫回避機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25460507
研究種目

基盤研究(C)

研究機関近畿大学

研究代表者

河原 佐智代  近畿大学, 医学部, 講師 (60297629)

研究分担者 宮澤 正顯  近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
高村 史記  近畿大学, 医学部, 助教 (90528564)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード自然免疫 / Toll様受容体 / レトロウイルス / 免疫回避 / B細胞 / 中和抗体
研究概要

HIV感染症を含む慢性持続性感染症において、病原体による免疫回避機構の解明は、その治療・予防法を開発する上で重要な課題のひとつである。Toll様受容体(TLR)を代表とする自然免疫受容体は、病原体の初期認識ならびに獲得免疫反応の誘導に重要であるが、その一方でその異常が自己免疫疾患や免疫不全の原因となる。本研究は、病原体がその自然免疫システムを利用することで宿主の免疫監視を回避する仕組みを有する可能性を示唆し、それを検証するものである。
我々は、マウスレトロウイルスの一種であるフレンドウイルスをTLR7欠損マウスに感染させると、ウイルス誘発白血病の発症が野生型マウスに比べて遅延することを見出した。TLR7欠損個体における感染後の中和抗体価は野生型より低いことから、TLR7欠損下で認められる白血病発症遅延は、液性免疫以外の免疫反応によるものと推測された。さらに、B細胞欠損マウスを用いた骨髄移植法により、B細胞特異的にTLR7を欠失したキメラマウスを作製し、同様に感染実験を行ったところ、これらマウスにおいてもレトロウイルス誘発白血病発症の遅延が認められた。現在、B細胞におけるTLR7シグナルがレトロウイルス誘発白血病発症過程に及ぼす影響を明らかにするために、サイトカイン等の検出を含めた解析を実施している。
一方、B細胞特異的TLR7欠損個体を予めCD4陽性T細胞認識ペプチドで免疫しておくと、野生型マウスと同程度の中和抗体が誘導されるものの、それら個体は野生型と異なり白血病死に至った。この結果は、B細胞におけるTLR7シグナルが、産生される中和抗体の質、あるいは細胞性免疫反応に影響を及ぼすことを示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

B細胞特異的TLR7欠損キメラマウスの作製、およびキメラマウスとノックアウトマウスを用いたレトロウイルス感染実験は当初の計画通りに進み、感染後の白血病発症経過、中和抗体の産生、ウイルス特異的抗体産生細胞の検出等は順調に遂行できた。しかし、中和抗体価に関して予備検討と異なる結果が出たこと、また、TLR7欠損個体での白血病発症経過がアジュバント投与の有無で異なる可能性が考えられたことから、これらの確認実験を優先したことにより、TLR7欠損下で認められる白血病発症遅延に関与する細胞および分子機序の解析が遅れている。一方で、B細胞におけるTLR7シグナルの有無が、誘導される抗体の質、あるいは細胞性免疫反応に影響することを示唆する結果を得た。これは、レトロウイルスセンサーであるTLR7からのシグナルがB細胞機能にいかなる変化を与えるかを理解する上で重要な知見であると考えられ、本年度の達成度としては概ね順調と評価する。

今後の研究の推進方策

基本的には当初の実験計画に従って今後も本研究を実施するが、以下の点を変更並びに追加する。TLR7欠損個体でのフレンドウイルス誘発白血病の発症遅延は、アジュバント(完全フロイントアジュバント)の投与下で顕著に認められ、またそれはB細胞のTLR7シグナルに依存しているという結果を得た。そこで、レトロウイルス誘発白血病発症経過とB細胞のTLR7シグナルとの関係を、アジュバントの影響を含めて明らかにする。また、レトロウイルス感染後の中和抗体産生は、B細胞のTLR7シグナルに大きく依存するが、ウイルス特異的CD4陽性T細胞を予め活性化することで、B細胞特異的にTLR7を欠損した個体においても高い中和抗体価を認めたことから、本研究に、TLR7シグナルを欠いてもB細胞が中和抗体産生形質細胞へと分化できる条件を探索するための解析を追加する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Infection of Adult Thymus with Murine Retrovirus Induces Virus-Specific Central Tolerance That Prevents Functional Memory CD8+ T Cell Differentiation.2014

    • 著者名/発表者名
      Takamura S, Kajiwara E, Tsuji-Kawahara S, Masumoto T, Fujisawa M, Kato M, Chikaishi T, Kawasaki Y, Kinoshita S, Itoi M, Sakaguchi N, Miyazawa M.
    • 雑誌名

      PLoS Pathog.

      巻: 10 ページ: e1003937

    • DOI

      10.1371/journal.ppat.1003937.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differential requirements of cellular and humoral immune responses for Fv2-associated resistance to erythroleukemia and for regulation of retrovirus-induced myeloid leukemia development.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuji-Kawahara S, Kawabata H, Matsukuma H, Kinoshita S, Chikaishi T, Sakamoto M, Kawasaki Y, Miyazawa M.
    • 雑誌名

      J. Virol.

      巻: 87 ページ: 13760-13774

    • DOI

      10.1128/JVI.02506-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] IFN-γ-producing effector CD8 T lymphocytes cause immune glomerular injury by recognizing antigen presented as immune complex on target tissue.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsumiyama K, Hashiramoto A, Takimoto M, Tsuji-Kawahara S, Miyazawa M, Shiozawa S.
    • 雑誌名

      J. Immunol.

      巻: 191 ページ: 91-96

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1203217

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Elimination of friend retrovirus in the absence of CD8+ T cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuji-Kawahara S, Miyazawa M.
    • 雑誌名

      J. Virol.

      巻: 88 ページ: 1854-1855

    • DOI

      10.1128/JVI.03271-13

    • 査読あり
  • [備考] 近畿大学医学部免疫学教室ホームページ

    • URL

      http://www.med.kindai.ac.jp/immuno/

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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