研究課題
病原体による免疫回避機構の解明は、慢性持続性感染症の治療・予防法を開発する上で重要な課題である。本研究は、レトロウイルスがToll様受容体(TLR)7を利用することで宿主の免疫監視を回避する仕組みを有する可能性を検証するものであり、本年度は主にB細胞に発現するTLR7の役割を複数の側面から解析した。フレンドレトロウイルス(FV)感染後、野生型マウスではIgMのみならずIgG型の中和抗体及び抗FV抗体が誘導される。しかし、B細胞のみのTLR7(B-TLR7)を欠いたキメラマウスでは、FVに対するIgM型の抗体も誘導されないことから、レトロウイルス感染後の抗体産生誘導の初期反応にB細胞のTLR7が必要であると推測された。実際、Th認識Envペプチドワクチン(i18)を接種することでFV特異的なTh及びTfh細胞を予め活性化しておくと、B-TLR7を欠いたマウスにおいても抗FV抗体の産生誘導とそれら抗体のクラススイッチを認めた。しかしながら、ウイルスに対する抗体が誘導できないにもかかわらず、B-TLR7欠損マウスでは、FV誘発白血病を発症するまでの期間が野生型マウスより長いという結果となった。さらに、B細胞を欠いた個体への細胞移入実験では、TLR7欠損B細胞を移入した個体に較べて、野生型B細胞を移入した個体の方が早くに白血病死に至った。また、TLR7欠損B細胞移入マウスでは、i18免疫により中和抗体が誘導されたが、野生型B細胞移入個体では中和抗体の産生誘導を認めなかった。以上の結果から、B細胞のTLR7シグナルはレトロウイルスに対する抗体産生誘導の初期反応に重要であるが、その一方で、ウイルス誘発白血病に対する免疫反応の抑制にも関与している可能性があると考えられた。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0122458
10.1371/journal.pone.0122458. eCollection 2015
http://www.med.kindai.ac.jp/immuno/