最終年度では、GFP-Spin1をNPC1モデルマウス由来シュワン細胞株(573C10)に遺伝子導入し、恒常的に発現する細胞株を作成し、オートファジー動態を解析した。Spin1をノックダウンした573C10細胞でオートファジー動態についても検証した。Spin1が恒常的に発現する細胞株では、p62の細胞内蓄積が減少し、増大したライソゾームも減少した。一方、Spin1をノックダウンした573C10細胞では、p62の細胞内蓄積が維持され、増大したライソゾームも減少しなかった。 研究期間全体では、血清飢餓処理により、ライソゾームが増大し、LC3IIやp62の発現量が増加し(WB)、p62の細胞内蓄積(IF)が観察された。また、LC3の代謝実験により、オートファジー不全であることを示した。さらに、光学顕微鏡で見られたライソゾームが増大した領域の構造体を電子顕微鏡で詳細に観察した。内部には、大きな空胞があり、多数の異常な膜状構造物が内包され、細胞内の代謝異常が観察された。ロイシン添加により、p62の細胞内蓄積が減少し、増大したライソゾームも減少した。そこで、マイクロアレイ法を用いて、コントロール(通常培地での培養)、血清飢餓処理とロイシン添加処理による遺伝子発現の挙動を解析した結果、アミノ酸、カリウム等のトランスポーター遺伝子群が同定された。 これらの結果より、ロイシン添加によるオートファジー不全を改善する効果と、Spin1の恒常的発現細胞株の効果は同じ挙動であると考えられた。しかし、Spin1の恒常的発現細胞株のライソゾーム内ロイシン含有量を検討したが、微量のため、結果が得られなかった。今後はin vivoでの動態を探り、オートファジー不全を改善する因子を同定し、遺伝子治療に繋がる研究を計画予定である。また、最終年度に論文として纏められなかったが、現在論文投稿準備中である。
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