研究課題/領域番号 |
25460512
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青才 文江 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80150316)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 先天性トキソプラズマ症 / トキソプラズマHSP70 (T.g.HSP70) / 樹状細胞(DC)ワクチン / 細胞傷害性T細胞(CTL) / Th1防御免疫 |
研究概要 |
本研究は“先天性トキソプラズマ症予防ex vivo 成熟DCワクチンの確立”を目的とする。これまでに、トキソプラズマ感染感受性C57BL/6マウスを用いて、末梢に存在する未熟DCを標的としたトキソプラズマ急増虫体特異的HSP70(T.g.HSP70)遺伝子ワクチンを行い、所属リンパ節のDCの分化・成熟が誘導され、続いて、Th1型防御免疫が誘導されること示している。さらに、本研究により、DC標的T.g.HSP70遺伝子ワクチンによる細胞傷害性T細胞(CTL)誘導に関する解析をすすめ、CD8+ CTLおよびCD4+ CTLが共に誘導されることを明らかにした。T.g.HSP70遺伝子ワクチンによるCTLは、1) T.g.HSP70遺伝子導入あるいはリコンビナントT.g.HSP70パルスsyngeneic DC細胞株(DC2.4)を標的とした特異的細胞傷害活性のみならず、トキソプラズマ感染標的細胞に対する特異的細胞傷害活性を示すことが明らかになり、さらに、2) CTLの移入感染実験により、感染急性期、および、慢性期に明らかな感染防御免疫が誘導されることが解析された。また、3) CD8+/CD4+ CTLによる細胞傷害機構は主にFas / Fas Ligandを介することが明らかになり、これらの研究成果を国際論文にまとめて発表した (Parasitology International 2014:63;408-16)。 本年度の研究によって、DC標的T.g.HSP70ワクチンの、CTL誘導による防御免疫とTh1型防御免疫の両者のT細胞性防御免疫誘導が証明され、T.g.HSP70のT細胞ペピチドエピトープ解析によるex vivo 成熟DCワクチン確立に向けた研究基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的は、ex vivo T.g.HSP70 DCワクチンによる妊娠マウスの胎盤と胎盤感染不顕性新生児へのT細胞性防御免疫誘導であり、平成25年度は、妊婦に対するDCワクチンのT細胞性防御免疫誘導について以下の解析を行った。 ① 感染・非感染妊娠マウスの胎盤のDC成熟およびTh分化誘導能の解析:感染・非感染妊娠マウスの胎盤を母体側deciduaと胎児側labyrinthに物理的に分離し、母体脾臓と胎児肝臓をコントロール臓器としてCD11c+細胞のDC成熟とCD4+T細胞のTh1/Th2/Th17分化誘導能を解析し、妊娠マウスの胎盤では脾臓に比較してDCのIL-12産生やTh1応答が弱い結果を得られ、胎盤における防御免疫機構にCTLが主体をなす可能性が考えられた。 ② in vivo T.g.HSP70遺伝子導入DCワクチンによるCTL誘導とCTLエピトープの解析:DC標的in vivo T.g.HSP70遺伝子ワクチン接種マウスの脾臓細胞中に、T.g.HSP70蛋白パルス或いはT.g.HSP70遺伝子発現B6マウス由来DC株(DC2.4-T.g.HSP70)のみならずトキソプラズマ感染DC2.4を標的とする特異的細胞傷害活性を示すCTLが誘導されること、CD8+およびCD4+CTLの両者のCTLが誘導されること、CTL移入感染実験による感染防御免疫誘導、および、CD8+/CD4+CTLの細胞傷害機構を明らかにし論文に発表した。 ただし、T.g.HSP70のペプチド合成によるCTLエピトープ解析はまだ終わってなく次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
① 感染細胞特異的CTLが認識するMHC分子結合T.g.HSP70エピトープの解析: HSP70 は異種間ホモロジーが高く、すでに報告した慢性トキソプラズマ症患者のCTLエピトープとT.g.HSP70のアミノ酸配列に高い相同性がみられることからT.g.HSP70の当該ペプチドを合成し、ペプチドパルスDC2.4を標的細胞とするCTL assay によりCTLエピトープを明らかにする。 ② ex vivo T.g.HSP70 DCワクチンによる妊婦のT細胞性防御免疫誘導の解析: (1) 非感染妊娠マウスをコントロールとして妊娠感染マウスの胎盤と脾臓におけるCTL誘導を解析する。標的細胞に、非感染およびトキソプラズマ感染DC2.4、DC2.4-T.g.HSP 70、および、T.g.HSP70エピトープパルスDC2.4を用いる。 (2) ex vivo T.g.HSP70 DCワクチンによる妊娠マウスの胎盤および脾臓におけるCTL誘導を解析する。既にリコンビナント(r)T.g.HSP70蛋白のパルスによるB6マウスの骨髄由来未熟DCの分化成熟誘導を報告している。そこで、i) WTマウスの骨髄由来未熟DCをex vivoで rT.g.HSP70蛋白パルスにより成熟させ、ii)得た成熟DCにMHC分子結合T.g.HSP70 CTLペピチドエピトープをパルスし、iii) T.g.HSP70ペピチドエピトープ発現DCを妊娠マウスに戻し移入し、iv) 妊娠マウスの胎盤および脾臓におけるCTL誘導を解析する。さらに、v) ex vivo成熟・CTLエピトープパルスDCワクチンが誘導するCTLの防御免疫能を妊娠感染実験により解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の後半は論文作成に時間を要したため、平成25年度中に終えることが出来なかったT.g.HSP70のCTLペプチドエピトープ解析を次年度に行うこととし、ペプチド合成のための使用額を次年度に繰り越した。 感染細胞特異的CD8+CTLが認識するT.g.HSP70ペプチドエピトープはMHCクラスI分子に結合する当該 9-mer T.g.HSP70ペプチドを数種類、CD4+ CTLのT.g.HSP70ペプチドエピトープはMHCクラスII分子結合13-15merペプチドを数種類合成し、それぞれのペプチドパルスDC2.4を標的細胞とするCTL assayによりCTLエピトープを解析する。MHC分子結合CTLペプチドエピトープの合成に、ペプチド1本(5mg)あたり、9残基で56,000円, 15残基で74,000円を必要とする。
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