研究課題
平成27年度(研究最終年度)の研究実績は次の通りである。広東住血線虫(Ac)5期幼虫が、非好適宿主脳内で死滅していく過程を 組織学的に追跡するとともに、遺伝的多形性を示す3株のAc株でその崩壊過程に変異が見られるかどうかを追究した。Hawaii株、小笠原株、千葉株のAc5隻をマウスに経口感染させたときの生存率には違いは見られなかった。しかし、Hawaii株と小笠原株では感染18日目までに脳内に移行したすべて生存していた。また25日目の虫体で変性しているものが見られるものの、24%(Hawaii株)から80%(小笠原株)の虫体は運動性を保持して生存していた。一方、千葉株感染マウスの脳内虫体は感染後14日目から運動性を消失し、25日目以降ではすべての虫体は崩壊死滅しており、変性崩壊の過程に千葉株と他の2株の間には明らかな相違が見られた。また、千葉株感染マウスの髄液中の好酸球数は他の2株に比べて著明に上昇していた。変性崩壊が始まる時期の虫体の観察で、虫体の腸管内には好酸球が多数観察されたことから、虫体の崩壊は好酸球による角皮の破壊が先行するという従来の説ではなく、虫体内に取り込まれた好酸球の作用によって内部から崩壊が始まると考えられた。3年の研究期間内で得られた成果は次のように纏められる。Ac10隻感染による生存率の比較ではHawaii株は他の2株よりも死亡率が高く、45日目の生存率は0%であったが他の2株は30%程度の個体が生存していた。部分好適宿主であるスナネズミに3株を感染させ45日目の回収虫体を比較したところ、Hawaii株と小笠原株は心臓と肺臓に虫体が移行していたが、千葉株は脳内にとどまったままであった。以上のように、国内から分離された3株はマウスやスナネズミに感染させることによって、宿主に対する病原性や虫体それ自身の移行態度にも違いがあることが証明された。
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