研究課題/領域番号 |
25460516
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有末 伸子 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00242339)
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研究分担者 |
東岸 任弘 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20379093)
本間 一 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10617468)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / Plasmodium gonderi / ゲノム解析 / 系統解析 |
研究実績の概要 |
アフリカに生息するオナガザルを宿主とするマラリア原虫 Plasmodium gonderiのゲノム解析を進行中である。このマラリア原虫はサルとヒトとの間の宿主転換を考察する際に進化学上で重要な位置づけにあり、ゲノム情報の解析が待たれている。これまでに、Illumina Miseq及び、PacBio RSIIの2種類の次世代シーケンサーにより、ゲノムを解読し、長さが0.5M以上の30本のScaffoldsにまとめることに成功している。GC含量は26.1 % でこれは近縁種でありヒトを宿主とする三日熱マラリア原虫P. vivax のGC含量は42.3 %より低かった。また、P. vivaxで同定されている5623個の蛋白コード遺伝子をqueryとしたblast探索から、約5300の相同遺伝子があることが判明した。先行研究から、P. vivaxの近縁マラリア原虫種がマカクなどの旧世界ザルとヒトの両方を宿主とすることができるのに対し、P. vivaxはマカクへの感染能を失っていることは、原虫の宿主赤血球への侵入に関与する分子である、duffy binding protein (DBP)のコピー数が1コピーであり、近縁のサルマラリア原虫よりも少ないことや、グループ3に分類されるreticulocyte binding protein (RBP) を持たないことが原因であると考察されているが、P. gonderi はDBPが2コピーで、グループ3に分類されるRBPを有することから、この仮説を支持する結果が得られている。また、比較ゲノムに先立ち、系統樹推定により、原虫種の分岐順を高精度に推定することが必要であるが、今年度はP. gonderi及びその近縁種4種の計5種について、それに必要な約5000の遺伝子のアライメントデータの更新を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノムを約30の大きなScaffoldにまとめることが出来た。マラリア原虫の染色体数は14本なので、Scaffold間のリンク情報を得ることで、染色体数と同数のScaffoldにまとめられる可能性が十分あり、目標達成の目星がついた。また系統解析ためのアライメント作成も順調に推移しており、来年度中に大量データによる大規模系統樹推定を行うことが可能であり、予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下の項目について、研究を進展させる予定である。 (1)現在30のScaffoldをリンク情報を得ることで色体数と同数の14本にまとめ上げる。(2)約5800と見積もられる遺伝子のアノテーションを完了させる。(3)約5000の遺伝子を使って、P. gonderiとその近縁種との系統関係を高精度に推定する。(4)比較ゲノム解析を行い、宿主転換に関わる候補分子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノムシーケンスの結果を得られたのが年度末に近かったために、その後の解析に必要なソフトウェアやハードディスク等の購入が次年度に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に持ち越された分は解析用ソフトウェアの購入費、データのストレージに必要な記憶媒体などに使用する。
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