研究実績の概要 |
アフリカに生息するオナガザルを宿主とするマラリア原虫Plasmodium gonderiのゲノム解読について、本年は長いリードで出力される次世代シーケンサーPacBio RS (Pacific Biosciences)により新たに2.9 Gbの塩基データを得て、昨年度までにMiSeq (Illumina) で解読した5.1Gbの塩基データとともにアセンブリーしてContigを得た。更に、既知のマラリア原虫ゲノム情報からContig間のリンクを予測し、PCRで結合を確認して、塩基データを核ゲノム14本、ミトコンドリアゲノム1本、アピコプラストゲノム1本の合計16本にまとめた。14本の染色体からは5,170個の遺伝子を同定した。染色体上での正確な位置づけが不明なContig については、ほとんどがテロメア領域に存在するものと考えられ、そこにはPlasmodium interspersed repeats (pir)と称される免疫回避に関わる抗原分子が数多く存在していた。比較ゲノム解析から、アジアのマカクを宿主とする5種のマラリア原虫、アフリカのオナガザルを宿主とするP. gonderi、ヒトを宿主とするP. vivaxの7種間において、シンテニーはテロメア領域以外では非常に良く保存されていた。抗原遺伝子ファミリー(pir、sera、msp3, msp7など)や赤血球への接合侵入関連分子の遺伝子、rRNAなどにおいて種間で遺伝子数のばらつきが観察されたが、それ以外の遺伝子は種間で保存されていた。1番染色体上にある遺伝子の中から7種間でオルソログ遺伝子が存在する157遺伝子、267,318座位(89,106アミノ酸座位)を用いて系統樹解析を行ったところ、ヒト三日熱マラリア原虫P. vivaxの分岐位置はアフリカのオナガザルを宿主とするP. gonderiの次、すなわち、アジアのマカクを宿主とする5種のマラリア原虫の根元であり、これまでの系統解析からアジア起源であるとされていたP. vivaxについて、アフリカ起源説を支持する結果が得られた。
|