研究課題
基盤研究(C)
マラリア原虫メロゾイトの赤血球侵入に関するタンパク質相互作用は、ほとんど明らかにされていない。本研究は、原虫リガンドに対する赤血球レセプター分子の網羅的な探索技術の確立をを行うものである。赤血球表面のタンパク質は膜貫通領域を持つ膜タンパク質である。そのため赤血球レセプター分子の網羅的な探索技術の開発は、「膜タンパク質の合成」という大腸菌等の既存のタンパク質合成法では実施困難な技術的障壁に阻まれていた。最近当センターでは、リポソームを添加したコムギ無細胞系を用いてタンパク質を合成するとプロテオリポソームが形成され、様々な膜タンパク質が高確率で合成される技術を確立した。さらに、ビオチン化プロテオリポソームを利用したアルファスクリーンによる膜タンパク質相互作用のハイスループットスクリーニング系も確立した。そこで申請者は、赤血球表面の膜タンパク質をビオチン化プロテオリポソーム上に合成し、マラリア原虫赤血球レセプター分子の網羅的な探索を行う本研究を着想した。【ビオチン化リポソームを用いたヒト赤血球膜タンパク質の網羅的合成】リポソーム上に発現させるタンパク質を、血液型抗原、ヒト赤血球のプロテオーム解析による膜貫通領域を持つタンパク質、さらに既報論文にある情報によって選定した(計90種程度)。当研究センターが所有するヒト完全長cDNAライブラリからこれらのクローンを得て、発現ベクターpEUにサブクローニング後、ビオチン化リポソーム存在下でコムギ無細胞合成系によって膜タンパク質を合成した。【プロテインタグ融合マラリア原虫リガンドタンパク質の合成】GAMA (80kDa) 、 MSPDBL1(77kDa)、RH5(60kDa)のタンパク質合成を行った。
3: やや遅れている
一回膜貫通タンパク質がビオチン化リポソーム上に配列せず、可溶性のタンパク質として発現する傾向にあることがわかった。そのため、赤血球膜タンパク質とマラリアタンパク質相互作用を検出する系が機能しない。これはコムギ無細胞系に使われるコムギ胚抽出液に含まれる脂質と相互作用することにより、膜タンパク質が可溶化されているものと考えられた。このため、組換えタンパク質のビオチン化法を再検討する必要が生じた。
一回膜貫通タンパク質をビオチン化させる方法を変更した。タンパク質のN末端にビオチンリガーゼ認識部位(BLS)を融合させ、コムギ無細胞系によるタンパク質合成と同時にビオチン化を行う。そのためのヒト赤血球タンパク質のサブクローニングを順次行っている。全体的な実験予定に変更の必要はないと考えている。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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http://www.pros.ehime-u.ac.jp/