研究課題/領域番号 |
25460521
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50333539)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 寄生虫免疫 / 自然型アレルギー |
研究概要 |
糞線虫が宿主に経皮感染すると、肺に好酸球を主体とした細胞浸潤を特徴とするレフレル症候群が発症する。申請者はその発症に上皮細胞由来サイトカインであるIL-33と自然リンパ球であるInnate lymphoid cells(ILC2)が関与することを明らかにしたが、その詳細なメカニズムや意義は明らかではない。そこで、平成25年度はIL-33およびILC2の産生するIL-5, IL-13の役割を検討した。その結果、①IL-5抗体投与によって糞線虫感染による好酸球浸潤は完全に抑制された。②IL-13欠損マウスでは好酸球浸潤が抑制されるだけでなく、IL-33の発現、ILC2の集積も抑制された。また、申請者はII型肺胞上皮細胞がIL-33を発現することを報告しているが、骨髄由来細胞の関与は否定できていなかった。そこで、③野生型マウスとIL-33欠損マウスの骨髄キメラマウスを作製して糞線虫を感染させたところ、IL-33の発現は骨髄由来細胞ではなく完全にレシピエントに依存することがわかった。また、肺胞上皮細胞のIL-33受容体(ST2)の役割を調べるため、④野生型マウスとST2欠損マウスの骨髄キメラマウスを作製したところ、肺胞上皮細胞がST2欠損マウスで骨髄細胞が野生型の場合、好酸球浸潤が亢進することを見出した。①-④の結果から、レフレル症候群発症にはILC2からのIL-5とIL-13が重要であり、さらにIL-13はIL-33の発現にも関与することが明らかとなった。またIL-33は骨髄由来細胞ではなく肺胞上皮細胞が産生していた。一方、上皮細胞の発現するST2は好酸球浸潤にネガティブに働いていると考えられ、骨髄系の細胞とIL-33を競合、あるいは積極的にIL-33を排除して炎症の抑制に寄与している可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定はIL-5、IL-13、IL-33 の肺胞上皮細胞などの肺実質細胞への働きを解析し、寄生虫感染防御における役割を明らかにすることであったが、IL-33が上皮細胞によってネガティブに制御されることやIL-13によってIL-33発現が誘導されることなどを明らかにした。また、次年度の寄生虫再感染モデルも作製しており、概ね順調であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進行しており、今後は当初の予定通り、IL-33 で活性化されたNH 細胞と好酸球の抗寄生虫作用における相乗効果、特に再感染に対する役割を明らかにする。また、糞線虫感染に伴う肺組織損傷の修復またはリモデリングを各種マーカーも測定して検討し、IL-33 やNH 細胞と好酸球の産生するサイトカイン、分泌因子の組織修復における働きを解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は骨髄移植を行なう実験計画を多く立てていたが、一部の系統のマウスでは必要な匹数を得るまでに時間がかかり、一部の解析を次年度に持ち越しているため、当該助成金が発生した。 繰越し分は平成25年度の研究の未了の解析(遺伝子発現解析、組織学的解析)の物品の購入に用いる。平成26年度分の助成金は当初の予定通り寄生虫感染防御の解析に使用する。
|