研究課題/領域番号 |
25460521
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50333539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染防御 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
糞線虫などのある種の線虫に感染した宿主では、好酸球の肺への浸潤を特徴としたレフレル症候群が発症する。申請者らはその発症に上皮細胞由来サイトカインであるIL-33と自然リンパ系細胞であるGroup II Innate lymphoid cells (ILC2)が関与することを明らかにしてきたが、その生体における意義は不明である。これを明らかにするため、平成26年度は肺に集積したILC2や好酸球の寄生虫感染防御における役割について検討した。まず、糞線虫Strongyloides venezuelensis (Sv)感染によって肺胞中に集積した炎症細胞数の変化を経時的に観察すると、ILC2の集積が感染排除後まで持続することを見出した。そこで、このILC2の感染防御における役割を検討するため、Svとは別の線虫であるNippostrongylus brasiliensis (Nb) をSv排虫完了2週間後に再感染したところ、Sv感染マウスでは非感染マウスに比べ、腸管から回収できるNb成虫数が減少していた。つまり、Sv感染経験マウスはNb感染に対して耐性を示すことがわかった。この現象はILC2や好酸球の増加が見られないIL-33KOマウスでは認められないことから、IL-33およびそれによって誘導されるILC2、好酸球がNb感染に対する防御反応に関与していることが示唆された。通常寄生虫浸淫地域では複数の寄生虫が蔓延しており、このSv感染によって誘導された非特異的耐性獲得は生体が寄生虫浸淫地域で生活する上で重要な自然免疫システムであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標は、IL-33 で活性化されたNH細胞(ILC2)と好酸球の抗寄生虫作用における相乗効果を明らかにし、特に糞線虫再感染に対する防御機構を明らかにすることであったが、IL-33を発現するマウスではILC2が肺内に持続的に存在し、線虫再感染時には速やかに好酸球を誘導して感染に対する宿主の耐性獲得に貢献していることを明らかにし、さらにこの現象がIL-33依存性であることも示すことができた。このことからここまでの研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究からレフレル症候群の意義が再感染防御にあることが示唆されたため、そのメカニズムについてILC2欠損マウスや好酸球欠損マウスなどを用いてさらに詳細に解析する。またILC2が持続的に存在することから、当初の予定通り組織修復とILC2の産生するサイトカインとの関連についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ILC2の働きを解析するためには骨髄移植マウスを作製する必要があるが、ドナーの変異マウスは生後3週までに死亡してしまうため必要なマウスを十分に得るために時間がかかり、一部の解析を次年度に持ち越している。また、出張費に用いる予定もあったが、学会が近隣で開催されたため当該繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分は平成26年度の研究の未了の解析のために物品の購入に用いる。また平成27年度は遠方での学会が複数予定されており、その旅費に用いる。
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