糞線虫が宿主に感染すると、肺に好酸球を主体とした細胞浸潤を特徴とするレフレル症候群が発症する。その発症には上皮細胞由来サイトカインであるIL-33と自然リンパ球であるInnate lymphoid cells(ILC2)が関与するが、さらに詳細なメカニズムや意義を明らかにするため本研究を行った。平成25年度はネズミ糞線虫Strongyloides venezuelensis(Sv)感染によるレフレル症候群発症にはILC2からのIL-5とIL-13が重要であり、さらにIL-13は肺胞上皮細胞のIL-33発現にも関与することを明らかにした。平成26年度はILC2の集積が感染排除後まで持続すること、さらにSv感染経験マウスはNippostrongylus brasiliensis(Nb)感染に対してIL-33依存性に耐性を示すことを見出した。平成27年度は、Sv感染マウスのNb抵抗性のメカニズムの解析を行った。Nb経皮感染後に肺から回収される幼虫数はSv感染、非感染マウス間で違いは認められなかった。また、Nb成虫を直接小腸に移入した場合の成虫の生着数も差はなかったことから、肺までの移行と小腸での定着には差はなく、肺から小腸へ至る過程でNbが傷害されていると考えられた。さらに、この現象はIL-5、好酸球依存性であり、CD4陽性T細胞非依存性であった。以上より、Sv感染時にIL-33によって肺に集積したILC2はSv排虫後も肺に残り、さらなる感染に対し、早期に大量のIL-5を産生して好酸球を活性化し、Nb抵抗性を宿主に賦与しているものと考えられる。通常寄生虫浸淫地域では複数の寄生虫が蔓延しており、このSv感染によって誘導された非特異的耐性獲得は生体が寄生虫浸淫地域で生活する上で重要な自然免疫システムであると考えられる。
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