研究課題/領域番号 |
25460523
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
長田 良雄 産業医科大学, 医学部, 准教授 (80282515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 寄生虫 / 免疫修飾 / 住血吸虫 / 糖尿病 / 関節炎 |
研究実績の概要 |
1.寄生蠕虫の1型糖尿病(T1D)に対する抑制機構の解明:[結果の概要] STZ誘発T1DモデルにおいてTh2サイトカインの冗長的な関与を検証するため、STAT6 / IL-10 二重欠損(STAT6 / IL-10 DKO)マウスを作成しマンソン住血吸虫(Sm)とヘリグモソモイデス(Hp)のSTZ誘発T1Dに対する抑制効果を検討した。その結果、どちらの蠕虫のT1D抑制効果も野生型と差がなかった。このことから本誘発モデルにおいてはIL-4・IL-13やIL-10による冗長的な抑制効果は否定された。Sm感染STAT6 / IL-10 DKOマウスの脾臓・膵リンパ節においてM2マクロファージマーカーの発現を解析したところ、Ym1およびArg-1は一定の発現上昇が観察された。このことから主要なTh2サイトカインのいずれにも依存せずに、寄生蠕虫はある種のM2様マクロファージを誘導し得ることが示唆された。[意義] 寄生蠕虫の糖尿病治療への応用においては、Th2偏位による副作用を避けて治療法をデザインすることが可能なことが示された。
2.寄生蠕虫のコラーゲン関節炎(CIA)に対する抑制機構の解明:[結果の概要] Sm感染は、IL-10KOマウスにおいては野生型マウスより弱い関節炎抑制傾向しか示さなかった。またSm感染によるIL-10KO脾細胞のIL-17産生量低下は野生型に比べ小さいものであった。このことから、SmのCIA抑制効果およびIL-17産生抑制効果においてIL-10は重要な役割を果たしていることが示唆された。[意義] 寄生虫による抑制機構が関節炎と糖尿病では異なることが示唆された。
3.寄生蠕虫破砕物の抗関節炎効果の検討:[結果の概要] 縮小条虫の破砕物懸濁液の腹腔内投与により関節炎スコアの低下が観察された。[意義] 低病原性の縮小条虫に抗関節炎作用をもつ機能分子が存在している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遅れていた遺伝子欠損マウスの作成が完了し実際の解析に入ることができ、今後の研究展開のベースとなる実験結果が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
1.糖尿病:まとめの実験を行い、論文作成に取り掛かる。 2.関節炎:住血吸虫および旋毛虫について、遺伝子欠損マウスを用いてサイトカイン依存性の解析を行う。また、縮小条虫の破砕物について、抗関節炎効果を示す条件をより詳しく検討し、その後にサイトカイン依存性の解析も行う。 3.実験的脳脊髄炎(EAE):住血吸虫、旋毛虫、縮小条虫の破砕物について抗炎症効果の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成が予定よりも若干遅れているため、本件に係る経費が繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
論文作成に向けて、まとめとなる実験を中心に遂行する。繰り越し分は英文校正料・掲載料などに充てる予定である。
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