[最終年度の研究成果] IL-10KOマウスまたはSTAT6KOマウスにマンソン住血吸虫(Sm)または旋毛虫(Ts)を感染させたあとにコラーゲン関節炎(CIA)を誘導し野生型(WT)マウスと比較した。<結果の概要> WTマウスではSm感染により関節炎症状およびT細胞刺激時IL-17産生のいずれも抑制されることがわかっている。IL-10KOマウスではSm感染による関節炎抑制作用は消失した。感染によるIL-17産生抑制作用は観察されたが、感染群においてもWTマウスの非感染群よりも高い産生量であった。またSTAT6KOマウスにおいてはSm感染により関節炎が重症化しIL-17産生も上昇した。TsではSmと大きく異なり、IL-10KOマウスにおいても感染による関節炎抑制作用が観察された。<考察> IL-10KOマウスにおける結果から、SmとTsでは関節炎抑制機構(IL-10依存性)が異なる可能性も考えられた。またSTAT6KOマウスの結果より、Sm感染による関節炎抑制・IL-17産生抑制はいずれもSTAT6に依存していることが判明した。
[研究期間全体のまとめ] 寄生蠕虫を利用した自己免疫疾患などの炎症性疾患に対する治療法開発を目的に本研究を実施した。抑制作用をもつ寄生虫を複数比較しながら、抑制効果に必須の因子を見出すことを目指した。腸管寄生線虫H.polygyrus (Hp) とSmは実験的1型糖尿病(T1D)に抑制効果を示すが、その効果にはTh2サイトカインは必須ではないこと、およびM2様マクロファージの関与の可能性が高いことを明らかにした。またSmは自己免疫性関節炎(CIA)にも抑制作用を示すがT1Dとは異なりこの作用はSTAT6に依存していることを明らかにした。本研究成果により蠕虫の抗炎症機構の一端が解明された。今後、低病原性寄生蠕虫を用いた炎症性疾患治療法開発につながることが期待される。
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