研究実績の概要 |
コレラ菌の産生するCholix toxin (Cholix) は、宿主細胞に侵入後、eEF2 をADP-リボシル化し、蛋白質合成を阻害することで細胞死を引き起こす。マウスへの腹腔内投与は、著明な肝臓障害を引き起こし致死に至る。 Cholix の宿主受容体を免疫沈降法で同定するため、細胞表面をビオチン標識したヒト肝臓癌細胞 HepG2 ライゼートを、昨年度末作成した Cholix 特異的なペプチド抗体(C-末端部分)を用い行った。結果、再現性良く、熱失活したChollix では認められない、野生型Cholix でのみ検出される二種類の蛋白質(50,34-kDa)を見出した。これらバンドを切り出しTOF-Ms/Ms 解析を行い、候補とされる抗体を用い確認を行った、しかし、候補とされた蛋白質を認識する抗体はいずれも反応しなかった。バンドからのペプチドの抽出収率を上げる必要があると考えている。 又、細胞致死機構の解析も引き続き行い以下の点を新たに見出した。即ち、TNFalpha 添加によるCholix の細胞死の亢進は、MAPK 阻害剤により阻害されること。TNFalpha の受容体であるTNFR1 の発現抑制により、Cholix+TNFalpha によるPARP の切断が顕著に抑制されること。PKC 活性化剤である PMA により、Cholix の細胞死亢進が TNFalpha 添加時と同様に認められること。AMPK の活性化剤はCholix の細胞障害性を抑制すること。以上の結果から、Cholix+TNFa による細胞死の亢進には、ROS からのPKC の活性化が関与していると推察される。 これらの知見をまとめ、現在、海外学術雑誌への投稿準備をしている。
|