研究課題/領域番号 |
25460533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅井 基行 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10201568)
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研究分担者 |
久恒 順三 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (40513180)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 黄色ブドウ球菌 / フィラグリン / 比較ゲノム / 菌固着 |
研究概要 |
本年度の研究実績として、これまでの付着/固着実験で用いたFLG-KO/B6マウスがFLG-KO/HR-1ヘアレスマウスに変わったので、付着/固着解析の再現性実験を行った。その結果、AD由来株とnon-AD由来株におけるFKO及びWTマウス皮膚での付着能は、有意な差はなかった。AD由来株とnon-AD由来株のそれぞれのマウス固着菌数の比は、AD由来株でFKOマウスに有意に固着し、固着実験でも再現性がある事を確認できた。したがって、付着/固着実験の結果よりヘアレスFKO, WTマウスでも同様の結果が得られることが確認できた。 AD患者の皮膚は角質層が脆弱であり、掻痒行動が多いので、角質層が剥がれやすい。そこで、粘着テープによる角質剥離法を用いて角質が除去された皮膚を再現し、病変部位へのAD由来株とnon-AD由来株による感染実験を行った。皮膚の創傷治癒により7日後には各疾患由来株で病変部位は治癒していくが、肉眼所見においてAD由来株は明らかにFLG-KOマウスの病変部位の治癒が遅く、また、病理組織像よりリンパ球の浸潤や上皮の肥厚化が認められた。non-AD由来株も未処理と比較すると炎症が残存していたが、程度は低くAD由来株とnon-AD由来株の病変部サイズで有意な差があった。 続いて、重度AD患者の皮膚は過度の掻痒行動により、角質層だけでなく表皮全体が障害される。サンドペーパーを用いて表皮を傷害した状態で同様の実験を行うと、肉眼的所見ではAD由来株とnon-AD由来株では有意な違いは認められなかった。しかし、病理組織像では、FLG-KOマウスにおいてAD由来株感染ではnon-AD由来株より明らかなリンパ球の浸潤がみられ、炎症の持続が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の実施計画①皮膚環境に対する適応性の解析において、央局ブドウ球菌のアトピー性皮膚炎からの由来株では、遺伝子改変が困難であった為、従来法では作製できず、方法の変更を余儀なくされた。そこで、新しいゲノム編集ツールの一つであるCRISPR/Cas9システムを黄色ブドウ球菌用に応用する為にプラスミドの開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、AD由来株の遺伝子改変法を構築し、付着・固着に関与する因子の欠損株を作製する。また、蛍光タンパク発現株を作製する。FKG-KOマウスに感染させて本株の適応性を比較解析する。 AD由来株の完全ゲノム配列を取得し、他の由来株のと比較解析によりAD由来株の特徴、あるいは、アトピー皮膚環境における代謝経路を比較解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験項目の変更する状況になった為、予定していた予算遂行の際に少額の端数が生じた。 平成25年度未使用額5,165円と平成26年度の予算を合わせて、消耗品として使用する予定である。
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