リケッチアのトロピズムおよび病原性は宿主細胞への付着能・増殖能に大きく依存していると考えられている。紅斑熱非発生地域のマダニより分離した9株のリケッチアの内、7株はRickettsia japonicaに遺伝学的に非常に近縁で、高い交差抗原性を有していた。さらに、標的細胞の血管内皮初代培養細胞への付着能・増殖能を調べた結果、R. japonicaを含む病原性リケッチに比べ、いずれも非常に低かった。これらの結果は、この地域で患者が発生しないにも係らず、住民の十数%が抗R. japonica抗体を持つ事実と一致しており、紅斑熱の疫学に新たなパラダイムを提起する知見である。
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