研究課題/領域番号 |
25460536
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
齋藤 光正 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315087)
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研究分担者 |
飯田 健一郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00346777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レプトスピラ感染症 / 細胞間接着 / 臓器内菌数 / 黄疸 / 出血 / 腎不全 |
研究概要 |
レプトスピラの侵入門戸は皮膚、粘膜であるが、その侵入メカニズムを明らかにするために、ヒト皮膚ケラチノサイトであるHaCaT細胞を用いてin vitro感染実験を行った。Transwellを用いてフィルター上にHaCaT細胞のmonolayerを作成し、Upper compartmentにレプトスピラを接種して培養を行い、Lower compartmentの培養液を経時的に採取して、monolayerを通過した菌を培養法ならびに定量PCR法により定量した。HaCaT細胞をフィルターごと取り出し、電子顕微鏡(走査型、透過型)でレプトスピラと細胞を直接観察した。その結果、レプトスピラは主に細胞間隙を通過するが、一部細胞内を通過していることを示唆する所見も見出された。 また、菌がヒトに侵入した後の定着場所、増殖場所を解明するため、 レプトスピラをハムスターに皮下接種し、感染後経時的に各臓器を摘出して、臓器内菌数をカウントした。臓器内菌数は、臓器をホモジナイズしてコルトフ液体培地を用いた限界希釈培養法により決定した。その結果、肝臓で最も菌数が増加するのが早く、黄疸が出現する前から増加していることがわかった。また、レプトスピラに対して免疫蛍光染色を行って解析すると、レプトスピラは肝細胞の間隙にのみ認められ、肝細胞内には存在しなかった。したがって、細胞内侵入性は肝臓では確認できていない。 申請者は、細胞間接着のタイトジャンクションの破壊が病態形成に大いに関わっているものと考えているが、それを裏付ける研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成25年度は、レプトスピラの侵入メカニズムの解明、ならびに菌がヒトに侵入した後の定着、増殖場所の解明を目標に掲げていた。HaCaT細胞を用いたin vitro感染実験、ハムスターを用いたin vivo感染実験により計画通り解析が進み、細胞間接着のTJの破壊が病態形成に大いに関わっているという仮説の裏付けができた。その分子メカニズムの解明までを目指しているが、初年度はまだ着手できておらず、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、レプトスピラ感染症の重症型でみられる黄疸、肺出血、腎不全のメカニズムについて解析を進める。いずれについても、感染症モデルとしてハムスターを用い、レプトスピラを皮下接種して解析する。 黄疸については、感染後黄疸が出現し死亡するまでの肝臓の経時的変化を解析するため、感染5,7,8,9日後、ハムスター各2匹ずつをセボフルラン吸入麻酔下に開胸し、灌流固定を行い、肝臓を摘出する。試料は走査型電子顕微鏡で観察する。その際、細胞断面の観察に適した凍結割断法と、細胞間の観察に適したクロスセクション法の2つの方法を採用する。予備実験で観察された肝内毛細胆管の消失をはじめ、肝細胞索全体の構築の乱れ、細胞接着の脆弱化、細胞間隙の拡大などに注目しながら、黄疸に至るまでの肝臓の経時的な形態学的変化を明らかにする。 肺出血については、凝固能異常、血管内皮細胞障害の2つの機序が考えられるため、レプトスピラ感染ハムスターにおいて、感染前、感染5,7,8,9日後に眼静脈叢より採血を行い、血小板数、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン、FDPを測定して、凝固能異常の有無を確認する。また、肺出血を呈した肺の血管壁構造の変化に注目しながら、電子顕微鏡、免疫蛍光染色法を用いて観察し、形態学的に出血の原因を解析する。 腎不全のメカニズムについては、特に糸球体、尿細管の変化に注目しながら電子顕微鏡、免疫蛍光染色法を用いて観察し、形態学的に腎不全の原因を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は物品費について当初計画より使用額が減少し、そのために次年度使用額が生じた。その理由は、分担研究者となっている「科学技術振興機構・地球規模課題対応国際科学技術協力事業委託研究費」において購入した消耗品、備品が幸運なことに当該研究においても使用可能であったためである。 次年度は、レプトスピラ感染症における黄疸、肺出血、腎不全のメカニズムについて解析を進める。感染症モデルとしてハムスターを用いるため、動物購入費が多く必要となる。また、その後の生化学的解析、形態学的解析にも研究費が必要である。使用計画は以下の通りである。 物品費:1,700千円、旅費:500千円、人件費・謝金:200千円、その他:400千円
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