研究課題
最終年度は、経皮感染したレプトスピラの感染後の動態を明らかにするための解析を行った。発光細菌(Photorhabdus luminescens)由来の Luciferase 遺伝子を導入した Leptospira interrogans serovar Manilae M1307株 をハムスターに皮下感染させ,in vivo imaging system (IVIS) を用いて感染局所の発光を観察した。その結果、感染初期には皮下脂肪組織の多い皮膚で強い発光が認められた。感染ハムスターを灌流固定し表皮から皮下の病理組織切片を免疫組織化学法を用いて解析したところ、レプトスピラは表皮,真皮では認められず,皮下脂肪組織の血管内においてのみ認められた。また、脂肪組織を透過型電子顕微鏡で観察すると、血管内壁に形成された凝血塊内に,レプトスピラが多数認められた。レプトスピラは感染初期、脂肪組織血管内に定着し増殖することがわかった。レプトスピラは血管内腔の凝血塊内に認められたが、これがレプトスピラ感染の結果形成されたのか、既に形成されていた凝血塊内にレプトスピラが定着したのかは不明である。研究期間全体を通じて、レプトスピラ症の感染成立から重症化(とくに黄疸発症)に至るまでの病態メカニズムについて次のような新知見が得られた。レプトスピラは、皮膚の角化層が失われると表皮細胞間(あるいは細胞内)を通過して皮下まで侵入し感染が成立する。感染初期は皮下脂肪組織の血管内に定着し増殖する。やがて増殖の場は肝臓が主体となる。肝臓のディッセ腔に達したレプトスピラは肝細胞間に侵入を始め、細胞間接着を剥がして毛細胆管の構築を破壊する。その結果胆汁排泄障害を来たし、黄疸が生ずる。したがって、血管内定着、肝細胞侵入の際の標的分子が明らかになれば、それらのアナログにより重症化への進展を阻止できることが期待できる。
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