申請者らは以前、Legionella pneumophila が in vitro で増殖する際には糖の利用を必要としないが、細胞内寄生する際には、Entner-Doudoroff経路による糖代謝を必要とすることを見出した。そこで本研究では、なぜ、細胞内増殖では糖代謝を必要とし、どのような機序で糖代謝開始への転換を可能にしているのかを解明する目的で実験を始めた。 細胞内での本菌の振る舞いを解析する前に、L. pneumophila(WT)が in vitroでの培養において、静止期に移行する直前から遅静止期までグルコースを消費することを見出した。この現象が静止期で観察されることから、rpoS遺伝子に注目し、 rpoS遺伝子を欠損した株(rpoS-KO)での in vitro でのグルコースの消費を測定した。その結果、培養開始から18時間後にはグルコース消費が停止し、WTと比べ最終的なグルコース消費量も有意に少なかった。このことから、rpoSの欠損によりグルコース消費が抑制される事が示された。これは rpoS遺伝子が細胞内増殖におけるエネルギー源のスイッチングに関与する可能性を示した。マウスのマクロファージ内でrpoS-KOはWTと同程度の増殖を示したが、ヒメネス染色により細胞内の菌を観察したところ、WTでは菌が細胞外に放出されている様子が多く観察されたが、rpoS-KOは菌が細胞内に留まっているものが多かった。これはrpoSを欠損した事でtransmissive formへと分化出来ず、細胞外へ移行できなかったと推察された。。
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