研究課題/領域番号 |
25460538
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宮本 比呂志 佐賀大学, 医学部, 教授 (40229894)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レジオネラ / 自然免疫 / Naip / pyroptosis |
研究概要 |
C57BL/6などほとんどの系統のマウスのマクロファージではレジオネラの細胞内増殖が抑制されるが,これには細胞死(pyroptosis)が深く関わっている.Pyroptosisにはカスパーゼ-1の活性化が必須で,この過程にNaip5遺伝子産物が関与していることが知られているが,マウスのマクロファージが有する細胞内レジオネラの認識機構についての実体は不明である.本研究では,レジオネラが,宿主のNaip5蛋白質を中心とした複合体 (Naip5複合体) (インフラマソーム)に認識されているとの仮説を立て,それを証明する. まず、C57BL/6マウス由来のNaip5 cDNAをクローニングし,そのコード領域を,プロモーター,GFP配列,G418耐性遺伝子を含む市販の発現ベクターに連結した.これを線状化してエレクトロポレーションでRAW264細胞に導入後,G418で選択し,GFP-Naip5融合遺伝子が染色体に組み込まれて,高レベルかつ安定に発現するクローンを選別した. そこで,RAW-Naip5をもちいてレジオネラ感染に対する応答を検討した. RAW-Naip5では,レジオネラ感染時にEthD-1の取り込みが増大することから,細胞死が起きることが明らかになった.レジオネラ感染細胞の死はLDHの放出量が増大することからも確かめられた.さらにこのとき,IL-1βの分泌量が顕著に上昇し,カスパーゼ1が活性化されていることが明らかになった.また,レジオネラの細胞内増殖が抑制されることがわかった.このような応答は,フラジェリンを欠損したレジオネラを感染させた際には全く起きなかった.これらの結果から,本研究で作製したRAW-Naip5において,Naip5蛋白質依存的にフラジェリンが認識されてpyroptosisが誘導され,菌の細胞内増殖の抑制に寄与していると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で作製したRAW-Naip5において,Naip5蛋白質依存的にフラジェリンが認識されてpyroptosisが誘導され,菌の細胞内増殖の抑制に寄与していることが明らかにされた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Naip5とフラジェリンとの直接の結合の有無を検討する必要がある.293細胞でNaip5とフラジェリン遺伝子 (flaA) を一過性に共発現させ,免疫沈降実験を行う。 また、マウスのレジオネラ感染に対する自然抵抗性遺伝子Naip5 (NLR-family, apoptosis inhibitory protein) は多型性を有しており,マウスの系統の違いで少なくとも3種類の配列が存在するので、これらの3種類のインフラマソームの機能の違いを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が比較的順調にすすんだため、実験試薬などの物品費が少額で済んでいる。また,旅費や人件費も使用しなかった。 研究を更に推進し、積極的に学会発表などを行うことで、実験試薬の消耗品購入や旅費などに充当する。
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