研究概要 |
大腸菌の新規O血清群株について、ゲノム情報を基盤とした遺伝学的特徴の解析を行った。2011年に大腸菌のレファランスセンターであるデンマーク国立血清研究所(Statens Serum Institut:SSI)により新しく6種類のO血清群(O182からO187)が追加された。これらの新規O血清群は、前回2004年にSSIにより8種類(O174からO181)が追加された時と同様に、志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli:STEC)に見出された未同定のO血清群が追加されたと予想された。SSIより入手した新規O血清群STEC参考株を用いて病原関連遺伝子(stx1, stx2, eae)の保有をPCRにより確かめたところ、O182:stx1/eae、O183:stx2、O185:stx1/stx2、O186:stx2/eaeであり、O184とO187はいずれも陰性(non-STEC)であった。7種類のハウスキーピング遺伝子の配列情報を基に系統分類を行ったところ、O184およびO186は系統Aグループ、O181およびO182はB1グループ、O183およびO185はB2グループに分類された。MiSeqシステムにより各株のドラフトゲノムを取得し、まずはO抗原コード領域を抽出してそれぞれのO血清群に特異的なPCRプライマーをデザインした。これまでに収集したヒト患者およびウシ糞便由来株STECについて特異的PCRを行ったところ、O182-9株、O183-12株、O185-1株が確認された。
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