研究課題
C型とD型ボツリヌス菌は、産業動物(ウシ、ウマなど)に致死性の高い感染症(ボツリヌス症)を引き起こすことから、食品・畜産業界への被害が深刻である。C型とD型毒素遺伝子は、バクテリオファージ(毒素変換ファージ)により、主に近縁種間で伝達されている。このため、ボツリヌス症の被害を抑制する有効な感染制御法として、毒素変換ファージの宿主認識メカニズムを解明し、その本体を十分に理解することが重要である。最終年度では、C型毒素変換ファージ、c-stファージの宿主認識分子を同定するために、1)c-stファージ尾部タンパク質および2)c-stファージ由来溶菌酵素の解析を行なった。1)c-stファージのゲノム情報およびタンパク質の質量分析器とN末端アミノ酸分析器を用いた解析により、c-stファージゲノム上の98-158 kbp領域にファージタンパク質をコードするopen reading frame (ORF)が存在することが示唆された。その中で、ORF 160とORF 165のタンパク質に対するウサギポリクロナール抗体(一次抗体)を用いたイムノゴールド染色を行い、電子顕微鏡により観察すると、ORF 160はファージの尾(鞘)、ORF 165はファージの頭を構成するタンパク質であることが明らかとなった。現在、98-158 kbp領域の個々のORFについても同様な手法により、ファージを構成するタンパク質の解析を行なっている。2)ファージタンパク質をコードするORF 領域で、既に公開されているデータベース上の遺伝子との相同性を調べると、ORF108とORF155が溶菌酵素の可能性が考えられた。そこで、2つの遺伝子を個別に発現ベクターに構築し、大腸菌発現系または枯草菌発現系を用いて、組換えタンパク質として発現させその精製を試みた。しかしながら、いずれの組換えタンパク質も発現量および精製量が少なかった。現在、培養の時間や温度などの条件を検討している。また、他の数種類の発現ベクターへの構築も行っている。
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