研究課題/領域番号 |
25460543
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
藤原 永年 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (80326256)
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研究分担者 |
綾田 稔 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90222702)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖ペプチド脂質 / 非結核性抗酸菌症 / M. intracellulare / 宿主応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、MAC菌が感染宿主内で特異糖ペプチド脂質抗原であるglycopeptidolipide (GPL) のアセチル基修飾の変化により、宿主免疫応答から逃避して長期生存を可能にすることを分子機序から実証する試みである。当初は臨床分離株Ku11を用いて宿主応答の検討を行う予定で計画し、昨年度はKu11株に存在する新規GPLの糖鎖構造を明らかにした。今年度はこの新規GPLを用いて宿主応答を検討する予定であった。一方、M. smegmatis J15cs株の脂質生化学的特徴を検討していたところ、M. smegmatis mc2 155株に比べ宿主細胞内で長期に生存することが明らかになった。J15cs株がmc2 155と相違する点はGPLが欠損していることであったため、宿主細胞内でのJ15cs株の長期生存はGPLに起因すると仮定した。そこで、当初計画のKu11株を用いた検討を一時的に中断して、先行で本年度はJ15cs株を用いた検討を実施した。GPL生合成遺伝子を比較したところJ15cs株のmps1遺伝子がmc2 155に比較して18 bp欠損しており、J15cs株にmc2 155株のmps1遺伝子を入れ戻した変異株はGPL産生を回復した。この変異株の特徴を精査したところ、細胞形態がJ15cs株本来のrough型からmc2 155株のsmooth型に変化し、宿主細胞内での生存期間においてもmc2 155株と同様の挙動を示し、J15cs株本来の長期生存が認められなかった。以上の結果から、J15cs株は細胞表層に存在する特徴的なGPL分子を欠損することにより形態がsmooth型からrough型に変化をもたらし、宿主認識に支障を来したこと、また、GPL欠損により直接的なTLR2レセプターによる認識機構からエスケープしたことにより宿主細胞内で長期生存することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に構造を解析したKu11株GPLについてアセチル基付加の位置決定については、MALDI-TOF MS装置の修理や感度不足の影響もあり、未だ完了していない。また、本研究課題と関連したM. smegmatis Ku11株のGPL欠損による宿主応答機序の解析を優先したため、本来申請時に提案した計画は少し遅れ気味である。しかしながら、J15cs株の解析は本研究課題と密接に関連しており、優先順位の変更のみで本来の目的に即した検討内容であり、次年度の本研究課題に活用できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標はGPL構造が宿主応答に及ぼす影響を解明することである。J15cs株GPLを用いた検討から、GPL欠損による形態変化や宿主応答の違いが明らかになったので、アセチル基の付加による宿主応答の変化と並行して検討していきたい。我々は血清型7,13,16型GPLの生合成遺伝子をクローニングしており、Ku11株の新規GPLの生合成遺伝子を比較することで、糖鎖合成の観点からも宿主応答の検討が可能と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度の項で述べたように、当初の計画にない検討を優先した。検討内容は本研究課題とは別の共同研究になっているため、あえて経費を本研究費から支出せず、次年度に繰り越す措置をした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に計画していたKu11株のGPLアセチル基付加の位置検討や血清型5, 6型GPLの構造解析を優先順位の関係で後回しにしたが、それらの検討に必要な消耗品購入等に次年度利用する予定である。
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