本研究の目的は腸管系病原細菌であるサルモネラ属細菌による感染性腸炎における抗菌レクチンRegIIIbetaの役割を明らかにすることである。平成25年度の研究計画は「ネズミチフス菌の遺伝子破壊株を用いた殺菌試験によるRegIIIbeta抵抗性を付与するサルモネラ由来のタンパク質の同定」であった。これまでの我々の研究結果より、ある転写調節因子をコードする遺伝子の破壊株ではサルモネラによるRegIIIbeta抵抗能の著しい減弱が認められていた。そこで、その転写調節因子に制御される遺伝子(エフェクター遺伝子)の関与を明らかにすることを試みた。エフェクター遺伝子の破壊株を作成し、それらのRegIIIbetaに対する抵抗性について、野生株および転写調節因子の破壊株と比較した。その結果、これまでに調べた全てのエフェクター遺伝子破壊株は野生株と同様にRegIIIbetaに抵抗性を示した。次に、その転写調節因子の感染性腸炎における役割を調べるために、サルモネラ腸炎モデルであるストレプトマイシン前投与マウスを用いた感染実験を行い、サルモネラの腸管内定着能について野生株と比較した。その結果、野生株と比較して、破壊株における腸管内定着能が明らかに減弱したことから、本転写調節因子はサルモネラ腸炎における必須な腸管定着因子の一つであることが明らかとなった。今後、サルモネラ腸炎における本菌の腸管内定着能とその転写調節因子に関連性について、詳細に解析を進める予定である。
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