平成25年度の研究より、サルモネラのRegIIIbeta抵抗性を担う転写因子Xを同定した。平成26年度の研究計画は「RegIIIbeta抵抗性を担うサルモネラ由来のタンパク質のサルモネラ腸炎における病原性評価」および「RegIIIbetaノックアウトマウスを用いた感染実験によるサルモネラ腸炎におけるサルモネラのRegIIIbate抵抗性の意義」であった。そこで、本年度は先ず、サルモネラのRegIIIbeta抵抗性の意義について、ストレプトマイシン前投与腸炎モデルを用いて検討した。野生型マウスと比較して、RegIIIbeta抵抗能が源弱した転写因子X変異株では炎症時における腸管定着能が減弱した。一方、RegIIIbetaノックアウトマウスではこの減弱した腸管定着能が回復したことから、in vivoにおける転写因子Xに依存したRegIIIbeta抵抗性はサルモネラ腸炎における腸管内定着に関与することが明らかとなった。次に、サルモネラ腸炎におけるRegIIIbetaの役割を明らかにするために、ストレプトマイシン前投与腸炎モデルを用いて、野生型とRegIIIbetaノックアウトマウスを比較解析した結果、腸炎強度に違いが認められた。また、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由飲水による腸炎モデルでも、同様な傾向が認められた。これらの結果は腸管の炎症におけるRegIIIbeta発現の重要性を示唆するものである。さらに、腸内細菌叢解析の結果、野生型とRegIIIbetaノックアウトマウスにおける腸内細菌叢バランスに明らかな違いが認められた。現在、腸炎症時における、この崩れた細菌叢バランスの意義について、解析を進めている。
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