研究課題
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は、きわめて致死率の高い感染症である。この感染症を引き起こす主な原因菌であるA群レンサ球菌は、小児に咽頭炎などを引き起こすありふれた病原体である。我々は、STSS患者分離株(STSS株)において、病原因子の発現を抑制している制御因子(CsrS/CsrR、Rgg)に変異があり、この変異により様々な病原遺伝子の発現が上昇し、STSSの様な重篤な症状を引き起こすことを報告した。昨年度、emm1型のSTSS株の病原遺伝子の発現を調べた結果、csrS/csrR、rgg遺伝子に変異はないにもかかわらず、11株において病原遺伝子の発現が上昇していることを明らかにした。本年度は、遺伝子発現を上昇させている原因遺伝子を同定することを目的とした。ゲノムを比較し、遺伝子を解析した結果、①sic遺伝子のプロモーター領域の変異、②spy0218遺伝子の変異、③rocA遺伝子の変異、④csrR遺伝子のプロモーター領域の変異が原因であることが判明した。1株は原因がわからなかった。sic遺伝子のプロモーター領域の変異は6株、csrR遺伝子のプロモーター領域の変異は2株あり、その他は1株ずつ存在した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的と同じところまで進んでいる。
・in vivoにおける変異の影響それぞれの変異がin vivoで病原性に与えるか調べるため、マウスを用いた動物実験を行う。咽頭炎由来株(Se235)およびSe235を変異させた株(Se235sicp*、Se2350218、Se235rocA)について、ddYマウスの腹腔内に接種し、7日間経過観察し、各株の生存曲線を作成する。変異により腎臓、肝臓、および肺に障害が起きているか調べるため、マウスの腹腔内に接種した腎臓、肝臓、および肺を摘出し、病理組織標本を作製し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、病理組織検査を行う。また、皮下に菌を摂取し、経過観察する。病変部位を測定し、それぞれの株で比較する。、マウスから、皮下組織を摘出し、病理組織標本を作製し、HE染色を行い、病理組織検査を行う。・変異遺伝子間の制御ネットワーク本研究で見出される制御因子、CsrS/CsrRやRggの関連性について検討する。A遺伝子およびcsrR/csrS遺伝子、rgg遺伝子変異株を作製し、各株からtotal RNAを抽出する。抽出したRNAを用い、逆転写反応を行い、cDNAを合成する。合成したcDNAとTaqManプローブ等を用い、それぞれの制御因子をコードする遺伝子について定量RT-PCRを行う。変異がみられた因子により制御されている病原遺伝子群の結果、および、それぞれの制御因子間の定量RT-PCRの結果からそれぞれの因子間の制御ネットワークを推測する。推測したものが正しいか調べるため、各制御因子をコードする遺伝子の二重突然変異を作成し、制御されている遺伝子の発現量を測定し、どちらの制御因子が上位か確定する。
次世代シークエンス解析が安く行うことができた。
病理組織標本の外注分に充てる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Epidemiology Infection
巻: 143 ページ: 864-872
10.1017/S0950268814001265.
J Infection Chemotherpy
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