日本国内の土壌より分離されたBacillus cereus groupのうち、セレウス菌およびチュリンゲンシス菌と同定された菌株50株を、7種類の遺伝子によるMLST系統解析に供した。 その結果、臨床分離セレウス菌と近縁であった菌株および新規のMLST Sequence Typeを示したものから11株を選抜して食中毒由来株4株、院内感染由来株4株と共に全ゲノム配列解析および網羅的SNP抽出による系統解析を行った。一部の土壌由来セレウス菌はMLST解析と同様に、炭疽菌を含む臨床分離セレウス菌と近縁なクラスターを形成することが明らかとなった。一方、炭疽菌特異的病原因子を持つセレウス菌はなく、公衆衛生上リスクの高い病原性を持つセレウス菌は確認されなかった。一部のクラスター内の菌株では、溶血素毒素遺伝子hblオペロンの欠失していたが、別の溶血素毒素遺伝子nheオペロンは解析に供したほぼ全てのセレウス菌で保持されていたことが明らかとなった。 現在、国内に生息する野生動物糞便からのBacillus cereus groupの分離も行っており、セレウス菌およびチュリンゲンシス菌を複数株同定している。一部について全ゲノム配列解読および網羅的SNP抽出による系統解析を行ったところ、土壌由来のセレウス菌と同一のクラスターを形成するものおよび独立したクラスターを形成するものが得られた。動物種や生息地域を増やしてさらに詳細な遺伝学的系統解析を行っているところである。
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