研究課題/領域番号 |
25460558
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
前山 順一 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (40199641)
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研究分担者 |
伊保 澄子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80151653) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アジュバント / ワクチン / CpG-オリゴDNA / 粘膜免疫 / 形質細胞様樹状細胞 / インターフェロンα / 結核 / 遅延型過敏反応 |
研究実績の概要 |
CpGモチーフを含むオリゴDNAであるG9.1のアジュバント作用機構は、インターフェロン(IFN)αが重要な因子である可能性が示された。マウス骨髄細胞にG9.1を作用させてIFNαを産生させたところ、形質細胞様樹状細胞(pDC)に対する抗体またはIFNα受容体抗体の存在下で、明確な産生阻害が認められた。IFNαは、pDCが主たる産生細胞であり、IFNαのオートクリン作用による産生増強機構を阻害したと考えられる。しかしながら、G9.1とジフテリアトキソイド(DT)とを同時経鼻投与した場合、事前に抗IFNα受容体抗体を経鼻投与したが、明確な阻害反応は認められなかった。さらに静脈内に投与した場合にも阻害傾向はあったものの明確な差は認められなかった。一般的に多くの細胞にIFNα/β受容体が存在するため、in vitro での効果と比べ、in vivoではその効果が出にくいものと考えられる。また、IFNα受容体に対するRNA干渉によるノックダウンのため、遺伝子導入した細胞株を作成したが、pDC細胞株については、これが著しくその生存率に影響を与えることが分かった。これらのことからG9.1のアジュバント作用には、IFNαを中心としたメカニズムがあると考えられた。 一方、遅延型過敏反応(DTH)でのワクチン有効性評価系をモルモットの皮膚反応およびマウスの足蹠反応で構築してきた。これを踏まえ、実際に結核菌噴霧感染をさせた。BCGを初回免疫した後、結核菌抗原とG9.1の組み合わせでブースターとして皮内投与したとき、モルモットにおいては、DTHによる評価系とほぼ同様な有効性評価が得られたが、マウスにおいては、系統によって結核菌やBCGに対する感受性が異なり、DTHと感染防御能との間に乖離があることが分かったが、数種類の系統を検討することにより有用な感染モデル系ができつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に関しては、G9.1のアジュバント作用の作用機構に関与している因子と考えられるIFNαを中心とした作用機構の検討および動物を用いた有効性の評価法構築に関する基礎的な検討が中心で進めたためであり、今後は、学術的観点からG9.1の直接の作用機構を、マウスの免疫細胞の細胞・遺伝子・分子レベルの反応について検討し研究を進めてゆく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、IFNαを中心とした作用機構の検討、および動物を用いた有効性の評価法構築に関する基礎的な検討が中心であったが、今後、学術的観点からもG9.1の作用機構の研究をさらに進めてゆく必要がある。これまで動物を用いた実験については主に基礎的な免疫反応の解析が中心であり、さらに細胞・遺伝子・分子レベルの反応について検討することによって研究がより推進するものと考えている。したがって、今後粘膜アジュバントの作用機構については、マウスを中心に、形質細胞様樹状細胞等がG9.1によって活性化した以降の抗体産生や細胞性免疫増強へ至る経路に関係する他の細胞や因子を解明する。すなわち関与する細胞の同定やそれらの細胞から産生されるサイトカインや表面マーカー等の検討、並びに関連因子やその作用対象の探索を通じて作用機構を解明する。その比較検討に、当初の計画通り、既知の粘膜アジュバントである組換えコレラ毒素Bサブユニットとの比較から検討する予定である。それとともに、培養細胞株等を用いたin vitroの系での検討も今後の計画を踏まえて準備する。 一方、主にマウスを用いて結核菌感染でのブースターワクチン候補の投与条件を検討し、結核ブースターワクチンの開発の道筋を明らかにして行く方策にも力を入れてゆく。これは、モルモットと比べ統計解析や細胞・遺伝子・分子レベルの解析がより容易であるからである。BSL3動物実験室での結核菌感染実験の準備は整ったので、アジュバント等も含めたワクチン候補の有効性評価も進むと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定のものが一部含まれている。また28年度は、計上していた国際学会への参加・発表をまたも見送ったことも起因する。多年度にわたる計画の多くの動物実験を優先的に進めてきたが、まずは、簡便な抗体産生やDTH等基礎的な免疫反応の解析を中心に進めてきたため、その後に続く個々の実験の最終段階で採材した検体を保存してあり、それらの解析に必要な高額なアッセイキット・抗体・酵素等の購入がなされていない場合がある。
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次年度使用額の使用計画 |
まず予定していた解析用のアッセイキット・抗体・酵素等を購入し、動物実験で得られた検体の解析を終了させる等、個々の実験計画が順次終了するに伴い、本研究計画の期間にすべて執行されることになる予定である。平成29年度は、これまで未着手の部分を優先的に進めつつ、論文等の成果発表にも支出する予定であるので、助成金は計画に従い執行される予定である。
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