本研究では、主にヌードマウスを用い、インフルエンザウイルスを感染させたのち、抗ウイルス薬を投与し、その効果および薬剤耐性ウイルス出現メカニズムを明らかにし、より効果的な薬剤治療法を見出すことを目的とする。具体的には、①既存の抗ウイルス薬の併用による効果的な治療方法の探索、②ヌードマウスを用いた免疫不全持続感染モデルの確立および③ヌードマウスを用いた薬剤耐性ウイルス出現メカニズムの解明を目的とし、将来的に免疫不全患者を含め、より効果的な治療法についての知見を見出す。 昨年度までの結果から、マウスに馴化したA/California/04/09(pdmH1N1)株をヌードマウスに接種すると肺にウイルスが長期にわたり持続することが確認された。さらに、ヌードマウスにウイルスを接種し、抗ウイルス薬を単剤のみまたは併用投与を行い、その後のマウスの生死について観察した。また、抗インフルエンザ薬投与期間について、短期間および長期間の2種を設定し検討した結果、短期間の薬剤投与では、ヌードマウスの生残率はあまり改善しなかった。一方、長期間薬剤を投与した場合は、対照群に比較してマウスが長期間生残することが明らかとなった。また、長期間薬剤投与を受けたマウス肺においてもインフルエンザウイルスが長期にわたり残存していることが確認された。 本年度は、薬剤を投与したマウスから経時的に肺を採取し、ウイルスを分離し、薬剤感受性および遺伝子解析を試みた。その結果、長期間投与を受けたマウスからは薬剤感受性が低下したウイルスが多く分離され、また既知の薬剤耐性変異をもったウイルスが出現していることが明らかとなった。
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