研究課題/領域番号 |
25460563
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
後藤 敏 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00211920)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒトメタニューモウイルス / 中和抗体価測定法 / 組換えウイルス / ルシフェラーゼ / 緑色蛍光色素 |
研究概要 |
ヒトメタニューモウイルス(HMPV)中和抗体価の迅速測定法を確立するため、検出感度のよいマーカーを発現する組換えHMPV(rHMPV)をリバースジェネティクス法により作製した。平成25年度は、緑色蛍光色素(GFP)に加えてRenilla luciferase (Rluc)を発現する組換えウイルス(rHMPV-Rluc/GFP)を作製し中和抗体価測定に利用できるかどうかを検討した。コントロールとして作製したGFPを発現する組換えウイルス(rHMPV-GFP)に比べ、rHMPV-Rluc/GFPは、わずかに遅れる傾向があるものの、ほぼ同等の増殖能を示した。次に、rHMPV-Rluc/GFP接種後の培養細胞のRluc活性を経時的に測定した。接種後翌日には、Rluc活性を十分検出可能であることが明らかとなった。HMPVの多段増殖には膜融合タンパク質を開裂活性化するトリプシンを培養上清に添加する必要がある。一日目のRluc活性は、トリプシンを添加しなくてもほぼ同等の値が得られた。このことは、中和抗体価測定が、トリプシンなしで一日以内に完了できることを示唆した。次に、中和抗体価測定に使用するウイルス粒子数を検討した。その結果、わずか10個のウイルス粒子を感染させれば、翌日にはRluc活性を検出できることが判明した。測定に用いるウイルス粒子数は少なければ少ないほど、中和抗体価の測定感度が増すため、ウイルス粒子数を調整することにより、より感度の高い中和抗体価測定法が確立できる可能性が示唆された。HMPVがよく増殖できる培養細胞株は限られている。しかしながら、HMPVの増殖に不適な293T細胞でも感染後翌日にはRluc活性が検出できた。したがって、元来HMPVの増殖に適さない培養細胞でも中和抗体価測定に利用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトメタニューモウイルス(HMPV)は培養細胞での増殖が遅く、細胞変性効果も不明確なため、中和抗体価の測定は一週間以上かかる。また、プラークアッセイや蛍光抗体法などの煩雑な操作を必要とする。本研究では、高感度ルシフェラーゼ遺伝子を発現する組換えHMPVを作製し一日以内に完了できる中和抗体価迅速測定法を開発することを第一の目的としている。平成25年度は、緑色蛍光色素(GFP)に加えてRenilla luciferase (Rluc)を発現する組換えウイルス(rHMPV-Rluc/GFP)を作製し、Rluc活性を指標とした場合の組換えウイルス感染細胞の検出感度を、測定時期、接種ウイルス粒子数、多段増殖の面から検討した。その結果、多段増殖させない(培養上精にトリプシンを添加しない)条件下でも、中和抗体価を一日以内に十分な感度で測定できる可能性を明確に示すことに成功した。以上から、概ね今年度の目標は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、昨年度に作製したrHMPV-Rluc/GFPを利用して中和抗体価の測定を実際に試みる。従来の中和抗体価測定法であるプラークアッセイ法やrHMPV-GFPを利用したGFP発現を指標する改良測定法と比較検討しその優位性を検証する予定である。特に、中和抗体の検出特異性と感度の面から比較検討する。その後、本学の外来患者の中から多数の血清を得て、中和抗体価測定を試み、false positiveやfalse negativeの頻度、抗体価の値そのものの信頼性についても検討する。計画では、rHMPV-Rluc/GFPよりも高感度のluciferaseや分泌型luciferaseを発現する組換えウイルスを平成25年度に作製する予定であったが、これは平成26年度以降に作製し、さらなる高感度化と、細胞溶解プロセスの省略による簡便化をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画では、組換えヒトメタニューモウイルスを他種類作製する予定であったが、計画を変更して2種類に限定したため、物品費が減少した。さらに学会発表に関わる旅費は、校費である学内教育研究経費から支出したため使用されなかった。 当初の計画が変更され、初年度に計画されていた他種類の組換えヒトメタニューモウイルスの作製は、平成26年度以降になった。今後、これらの作製に物品費として使用する予定である。
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