研究課題
最終年度(平成27年度)は、rHMPV-Rluc/GFP [緑色蛍光色素(GFP)とRenilla luciferase(Rluc)を発現する組換えウイルス] を使って確立した抗体価迅速測定法を改良し、さらなる測定時間の短縮と操作の簡便化を目指した。この目的を達成するため、Rlucの代わりに、より感度の高いnanoluc(Nluc)を発現する組換えウイルス(rHMPV-Nluc/GFP)、ならびに分泌型Nluc(sNluc)を発現する組換えウイルス(rHMPV-sNluc/GFP)を作製した。Nlucとしてはトゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)のluciferase遺伝子(Oluc)を使用し、OlucのN端にシグナルペプチドを付加したものをsNlucとした。rHMPV-Nluc/GFPを利用すると、さらに短い時間(12時間)で中和抗体価を測定できるようになることがわかった。一方、rHMPV-sNluc/GFPを使用すれば細胞破壊操作を必要とせず、操作がより簡便になったが、測定時間はむしろ長くなり36時間以上要した。これは、rHMPV-sNluc/GFPのシードウイルスを作製すると、その溶液中に高濃度のsNlucが含まれてしまうためである。本ウイルスを接種するだけでウイルス接種後に洗浄を徹底しても極めて高いluc活性がバックグラウンドとして生じる。感染細胞から分泌されるsNlucの活性が明確になるには、感染から36時間は必要となる。最後に、rHMPV-Nluc/GFPを使ってウイルスの一次転写の検出を試みた。rHMPV-Nluc/GFPを接種してから、2時間後には一次転写によるNlucの産生がみられるが、しばしばバックグラウンドとの差が不明確で、安定して検出するのは難しいことがわかった。確実な検出には感染から最低6時間は必要とし、この方法での一次転写の解析は難しいと考えられた。
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