研究課題/領域番号 |
25460568
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福士 雅也 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 助教 (50313515)
|
研究分担者 |
坂口 剛正 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 教授 (70196070)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インフルエンザウイルス / 重症肺炎 / 肺サーファクタント |
研究概要 |
本研究では、「インフルエンザウイルス感染による肺炎の重症化メカニズムを明らかにし、ヒトへの治療応用を目指すこと」を目的としている。高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の他、2013年中国で流行したH7N9インフルエンザウイルスなど、新興インフルエンザウイルスの感染では致死率が高い。これらウイルスによる死亡者の全てで重症肺炎を起こしていることが判っているが、治療法は確立していない。本研究では新しい治療法開発が最終ゴールであり、昨年度は以下の点について進展した。 ①マウスを用いたインフルエンザウイルス感染によるヒト重症肺炎モデルを確立。 研究代表者は平成24年度より現所属の広島大学に異動した。このため、本科研費の初年度にあたる平成25年度は、マウス感染実験系を確立する段階からスタートした。その結果、インフルエンザウイルス感染マウス実験系を無事立ち上げることができ、病理組織学的にも、ヒト重症肺炎を再現できることを確認した。 ②新規人工調製肺サーファクタント投与の検討。 研究代表者はこれまでに、上記マウス感染モデルを用いて、抗インフルエンザ薬と既存の人工肺サーファクタントの併用投与により、マウス致死率を最大50%改善することを報告している(Fukushi et al., PLoS ONE 2012)。この人工肺サーファクタントは牛由来生物製剤であり極めて高価なことから、当初、肺サーファクタント構成成分を個別あるいは複数混ぜて投与することを計画していた。しかし、関連文献の詳細な検討により、完全な人工調製の肺サーファクタントを新規開発している研究グループがいる事を知った。現在この研究グループとの共同研究で、新規人工調製肺サーファクタントを提供してもらい、インフルエンザ感染マウスへの投与などの実験を進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①マウス感染実験系を立ち上げることができたこと。 ②ヒト肺サーファクタントの構成成分のうち、最も割合の多いジパルミトイルトスファチジルコリン(DPPC)を単独で感染マウスに投与することが当初の計画であった。しかし、物理化学的にDPPC単独では肺サーファクタントの特性は得られないことを文献的に知った。しかし、この過程で、新規人工調製肺サーファクタントを研究しているグループと知り合い、共同研究を進めることになった。この点で大きな進展があったと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
共同研究先から提供される新規人工調製肺サーファクタントを用いて、以下の点を検討する予定である。 ①新規人工調製肺サーファクタントと抗インフルエンザ薬との併用投与が、感染マウスの致死率を低下させるかどうかを検討する。 ②新規人工調製肺サーファクタントの単独投与での、感染マウスの致死率を検討する。 ③新規人工調製肺サーファクタントの量的検討、また、投与開始時期の検討などを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初、ヒト肺サーファクタントの構成成分の各々について、研究代表者が一つずつ実験・検討する計画であった。しかし、文献検討した結果、構成成分単独では肺サーファクタントとしての効果が得られないことが判った。しかし、肺サーファクタントについて物理化学的側面から検討しているグループが日本国内に存在することを知り、連絡・実験提案などを行い、共同研究を開始することになった。このように当初の実験計画を変更したことから、昨年度は当初の予定額より少ない消費となり、次年度へ回すこととなった。 次年度は、共同研究先から供与される新規人工調製肺サーファクタントを用いて、インフルエンザ感染マウスの重症肺炎の治療の検討を行う。またコントロールとして、既存の人工肺サーファクタントを用いて、比較検討を行う。
|