研究実績の概要 |
高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)をはじめ、2013年中国で流行したH7N9インフルエンザウイルスなど、新興インフルエンザウイルスの感染では致死率が高い。2009年に世界的に流行したインフルエンザA(H1N1)pdm09感染でも多くの人が亡くなった。これらのインフルエンザウイルスによる死亡者の全てが重症肺炎を起こしていることが判っているが、いまだ治療法は確立していない。このため本研究では「インフルエンザウイルス感染による肺炎の重症化メカニズムを明らかにし、ヒトへの治療応用を目指すこと」を最終的なゴールとしている。研究代表者らは、インフルエンザ肺炎の重症化に肺サーファクタント(肺胞腔内に存在する肺特異的因子)の欠乏が関わっていることを明らかにした(PLoS ONE 2012, PLoS ONE 2011)。この成果を発展させ、本研究課題では以下の点について検討を行い、重症肺炎メカニズム解明とヒトへの治療応用を目指した。特に最終年度には、③の新規人工調整肺サーファクタントを用いて検討を行った。 ①マウスを用いたインフルエンザウイルス感染によるヒト重症肺炎モデルを用い、既存の人工肺サーファクタント投与が効果を示すか否かを検討した。 ②肺サーファクタント構成成分のうち、どの成分が重症肺炎の緩和に影響があるのかを明らかにする。 ③インフルエンザ重症肺炎マウスモデルを用い、既存の人工肺サーファクタントとは異なる新規の人工調整肺サーファクタントの有効性を検討した。 実験の結果、残念ながら新規人工調整肺サーファクタントが既存人工肺サーファクタントより有効であることを示すことはできなかった。その理由の一つとして、投与前の段階の新規人工肺サーファクタントの調整方法に問題がある可能性が浮上した。この点を改善することにより有効性が発揮される可能性があると考えている。
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