研究課題/領域番号 |
25460570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤田 美歌子 熊本大学, 薬学部, 准教授 (00322256)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウイルス / 蛋白質 / 感染症 / HIV / Vpx / 抗ウイルス宿主因子 / SAMHD1 / 変異体 |
研究概要 |
既に研究代表者らは、HIV-2 VpxがT細胞中において抗ウイルス宿主因子SAMHD1と関わらない機能を発現することを報告した。本研究では、この機能の詳細を明らかにすることを目指している。 平成25年度は、Vpxの全長にわたる点変異体19個のシリーズを用いて、pEF1/Myc-HisAに組み込んだ発現ベクターからのそれらの蛋白質の発現パターン、多量化能、およびSAMHD1分解能を調べた。SAMHD1分解に関してはまず野生型Vpxについて調べたところ、Vpxの量が多過ぎるとSAMHD1を分解することができず、分解には適当量のVpxが必要であることがわかった。そのため、一定量のVpx変異体の発現ベクターを用いてSAMHD1分解能を調べ、分解が見られないものについてはさらに発現ベクターの量を振って再度SAMHD1分解能を観察した。これらの結果と、既に研究代表者らが明らかにした、Vpx変異体のマクロファージとPBL(T細胞)中におけるウイルス増殖性付与能を比較した。 その結果、野生型と同様かそれ以上の発現量を示した変異体の中で、C87A変異体は野生型Vpxと同様のSAMHD1分解能を示したが、マクロファージやPBLにおけるウイルス増殖性付与能は野生型に比べて明らかに低かった。また、P109A変異体も野生型Vpxと同様のSAMHD1分解能を示したが、マクロファージのみにおいてウイルス増殖性付与能が低かった。一方、P10L変異体にはSAMHD1分解能が全く見られなかったが、マクロファージでは野生型よりは低いものの増殖性付与能を示し、PBLでは野生型と同様の増殖性付与能が見られた。これらより、マクロファージやT細胞ではVpxがSAMHD1依存的機能を発現すること、またT細胞ではSAMHD1依存的機能がほとんどなく非依存的機能が主であることが示された。これらの結果はウイルス学的に意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はVpxのSAMHD1非依存的機能はT細胞で発現されることが示されており、本研究を計画した。今年度はVpxがより重要な働きを持つマクロファージにおいてもこのSAMHD1非依存的機能が発現されること、T細胞ではSAMHD1依存的機能がほとんど発現されずSAMHD1非依存的機能が主であることを示した。始めに計画した、SAMHD1非依存的機能に関わる候補因子の同定には成功していないが、新たな知見を得たこと、候補因子の同定に用いることができる変異体を決定したという点で、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度において、C87A変異体はマクロファージとT細胞において、またP109A変異体はマクロファージにおいてSAMHD1非依存的機能の発現量が少ないことを示した。今後はこれらの変異体を用いて、SAMHD1非依存的機能に関わる機能の実態解明や関連候補因子の同定を行いたい。
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