研究課題
HIV-2の持つ蛋白質Vpxは、マクロファージ中で抗ウイルス宿主因子SAMHD1を分解する機能を持つ。本研究は、VpxのSAMHD1分解非依存的機能の解明を目的として開始した。これまでにVpxの全長に亘る点変異体19種類を用いた解析を行ったが、マクロファージ中ではSAMHD1分解依存的機能のみしか観察されなかった。その過程で、VpxのC末端のポリプロリンモチーフ(PPM)の機能、すなわちVpxの多量化に関わることとSAMHD1分解にマクロファージ特異的に関わることを見出した。また亜鉛フィンガーの機能として、蛋白質の安定的発現に関わることを見出した。本年度はまず、これらの機能の詳細を解明することにした。Vpxの多量化に関しては生化学的解析を行うために、大腸菌を用いたVpx蛋白質の大量発現を検討した。その結果N末端にHisタグを有する蛋白質として発現することを確認し、精製法を検討中である。SAMHD1分解における関与については、蛋白質の安定化と関係があるのではないかと考え、まず293T細胞内での定常状態安定性を調べた。その結果、細胞内での発現量が多いとPPM点変異体は野生株と同様に発現するが、発現量を下げるとPPM点変異体の発現量は野生株のものに比べて低いことがわかた。さらにここにGagを共発現させるとPPM点変異体の発現は回復した。このことより、Gagが存在するウイルス放出細胞ではPPM点変異体は野生株と同様に発現しているが、標的細胞内では全長のGagが存在しないためPPM点変異体は不安定なのではないかと予想している。詳細は検討中である。さらに、7つのPPM点変異体のマクロファージにおける感染実験を行ったが、野生株よりも増殖性の低下が見られた。なお亜鉛フィンガーに関しては、検討を行っているが、メカニズムに関する明確な知見は未だ得られていない。なおSAMHD1非依存的機能については、活性化T細胞中で見られることが示唆されるため、実験を進めている。
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