研究概要 |
我々はこれまで、胃腸炎関連のピコルナウイルス、アイチウイルス(AiV)のゲノム複製機構の解明のための研究を行ってきた。本研究では、最近我々が発見した、AiV複製時に形成されるAiVタンパク質(2B,2BC,2C,3A,3ABのどれか)/ACBD3/PI4KB複合体について、ゲノム複製における詳細な機能解析に加え、複製複合体形成やゲノム複製に関わる新たな宿主因子の探索を行う。今年度は、AiV複製や複製複合体形成におけるAiVタンパク質/ACBD3/PI4KB複合体の機能解析および宿主タンパク質の役割について解析を行った。まず、複製複合体形成における宿主タンパク質の役割を明らかにするために、AiVポリプロテイン発現細胞をACBD3に対するsiRNAやPI4KB阻害剤で処理した後、AiVタンパク質、ACBD3,PI4KB,PI4Pを免疫染色し、siRNAや阻害剤無処理の場合と膜構造の変化を比べた。その結果、無処理の場合ドット状の膜構造上でAiVタンパク質とACBD3,PI4KB,PI4Pの共局在が観察されたが、ACBD3に対するsiRNA処理やPI4KB阻害剤処理により、これらの共局在が失われた。この結果はAiVタンパク質/ACBD3/PI4KB複合体を介したPI4P合成が複製複合体形成に重要であることを示唆する。 さらに、AiVタンパク質2B,2BC,2C,3A,3AB単独発現細胞におけるPI4P量をドットブロットにより調べた結果、いずれの場合もPI4P量が非発現細胞に比べて増加しており、これらのAiVタンパク質が細胞のPI4P産生量を増加させることが明らかとなった。加えて、in vitro kinase assayによりAiVタンパク質のうち3AのPI4KB活性化を検討した結果、3AだけではPI4KBを活性化しなかったが、そのキナーゼ反応液にさらにACBD3を加えることでPI4KB活性化が確認された。この結果は、3A/ACBD3/PI4KB複合体形成がPI4KBを活性化することを示唆する。 以上、今年度は、AiVタンパク質/ACBD3/PI4KB複合体形成がPI4KB活性化を通してPI4P産生を亢進し、複製複合体形成に重要であることを明らかにした。
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