研究課題/領域番号 |
25460572
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
佐々木 潤 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (70319268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アイチウイルス / PI4P / OSBP / ACBD3 / コレステロール |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、胃腸炎関連のピコルナウイルス、アイチウイルス(AiV)のゲノム複製機構の解明を目的とした研究を行ってきた。最近我々は、AiVのゲノム複製に必要な二つの宿主因子、ゴルジタンパク質ACBD3 および、脂質キナーゼの一つPI4KBを同定した。そして、AiVの複製部位で、ウイルスタンパク質(2B, 2BC, 2C, 3A, 3ABのうちのどれか)/ACBD3/PI4KB複合体が形成され、PI4KBによるリン酸化産物PI4Pが産生されることがウイルス複製に重要であることを明らかにした。本研究では、ウイルスタンパク質/ACBD3/PI4KB複合体の詳細な機能解析に加え、複製複合体形成に伴う細胞オルガネラの構造変化、複製複合体形成に関わるウイルスタンパク質や新たな宿主因子の同定および機能解析を行う。昨年度は、AiVタンパク質/ACBD3/PI4KB複合体形成がPI4KB活性化を通してPI4P産生を亢進し、複製複合体形成に重要であることを明らかにした。今年度は、このタンパク質複合体形成を通じてウイルス複製部位に産生されたPI4Pの役割の解析を行った。 PI4Pは、膜小胞輸送や脂質輸送を行う特定のタンパク質を膜上にリクルートする働きがある。我々は、そのようなPI4P結合タンパク質のうち、コレステロール輸送タンパク質OSBPがウイルス複製部位にリクルートされ、コレステロールを蓄積させていることを明らかにした。1)ウイルス複製部位に産生されたPI4PをターゲットにOSBPがリクルートされること、2)OSBP-2B相互作用により、PI4P結合タンパク質の中でOSBPが優先的にリクルートされること、3)OSBPを介したコレステロールの蓄積がウイルスRNA複製に必須であることが示唆され、エンテロウイルスやHCVと共通の性状が認められた。ただし、OSBPのリクルートにウイルスタンパク質との相互作用が重要な働きをしているという知見は、エンテロウイルスやHCVでは示されておらず、本研究で新たに見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画の大きなテーマとして、「アイチウイルスのゲノム複製に必要な新たな宿主因子の探索と機能解析」を挙げた。そして、今年度、新たな宿主因子、コレステロール輸送タンパク質oxysterol-binding protein (OSBP)を同定し、1)ウイルスRNA複製部位に産生されたphosphatidylinositol 4-phosphate (PI4P)をターゲットにOSBPがリクルートされること、2)OSBPとウイルスタンパク質2B間の相互作用により、PI4P結合タンパク質の中でOSBPが優先的にウイルスRNA複製部位にリクルートされること、3)OSBPを介したコレステロールの蓄積がウイルスゲノム複製に必須であることなど、詳細な解析をおこなった。この成果は、2014年、日本ウイルス学会総会で発表し、また現在、論文として投稿準備中である。したがって現時点で本研究は、概ね研究計画通りに進行し、成果もあげられているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にひき続いて次年度も、アイチウイルスの複製複合体形成およびゲノム複製に関与する、新たな宿主因子の探索と機能解析を行う。今年度、コレステロール輸送タンパク質oxysterol-binding protein (OSBP)がウイルスRNA複製部位にリクルートされ、ウイルスRNA複製部位にコレステロールを蓄積させることを明らかにした。コレステロール輸送に関与する宿主タンパク質は、他にも知られていることから、それらの宿主タンパク質についてアイチウイルスの複製への関与の解析を中心に、研究をすすめていく。siRNAを用いた解析により、新たな宿主因子が同定された場合には、さらに詳細な機能解析(ウイルスタンパク質やこれまでに明らかになっている宿主因子との結合能の解析、細胞内局在解析、阻害剤を用いた機能阻害解析など)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、新たな宿主因子を探索する行った実験の結果、見出された宿主因子候補タンパク質について、詳細な機能解析の実験を次年度行うため、そのための試薬を購入する費用に充てる目的による。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、新たに見出した宿主因子候補タンパク質についての機能解析やタンパク質間相互作用解析のための試薬や抗体、siRNA、阻害剤などの購入を計画している。
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